人生のリスタート

@kanahaku

第1話

星が転々とまばらに散らばっている夜空を見上げる 俺は空を見上げながらため息がでる。 息が白色に彩られ冬の寒さを一層深める。


スマホに目を落とし現在の時刻を確認する。 8時と表示されており、あと4時間もすれば俺は19を迎えることができる。


あと一年で十代も終わる。 長い期間だった、まだ終わりでもないがもう終わりでもいいかもしれない。 そんな気さえ思ってしまう。


一応誕生日、社会人を辞め持っている金は小銭が数枚。 これではそこらの小学生と同程度である。


「なんでこうなっちまったんだろ」


そんな誰もいない公園のベンチに腰掛けて、愚痴を吐く。


「金どうしよかな」


俺は再就職までこの小銭でしのがないといけない。 もしかして俺の見間違えじゃないかなと思い今一度確認するために財布の中身を見る。 だが何度見ても札はない、小銭が数枚存在するだけだ。


「あなた私についてきませんか」


突然目の前に少女が現れて驚愕する。 暗闇で輪郭もあまりはっきりしていない。

それにフードを目深に被っており顔もよく見えない。 それでも今の声色を聞いて高校生ぐらいの年齢かなと推測を立てる。 しかし誰だろうと問いただそうとしても口がパクパクと開くだけで声が出ない。


「喋ってくれないとわかりませんよ。言い返さないならついてきてもらいますよ」


何も言わない俺をもどかしいと思ったのか少女は俺の手を取ってどこかもわからない場所へと足を進ませた。 足が動いたことによって俺の喉も連携して俺の考えとは別のことを話し始めた。


「なあ、ついていったら金くれるか」


俺の一言は少女にとって驚くべきことだったのか少女の足は止まった。


「もちろんあなたが欲しいだけの額をお払いします。タダってわけにはいきませんけど」


今の一瞬彼女の声のトーンが一段階高くなったような気がした。 それが間違えていないと証明するようにあくる速くなった。 俺はなぜかこの暖かい手に救われたような気がしてこれ以上何かを聞こうとは思えなかった。 しかし、ずっと彼女の手は震えていた。 目で見える彼女と腕に触れる彼女の腕はまさに真逆で俺に親しいものを感じさせた。

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