第14夜 竜と言う超重機
「とりあえず、ニンジンとジャガイモ。あと試しにロッサビアンコを植えてみよう」
前回の会議で食べられるものと食べられないものが分かったので、比較的安全な植物と、プラス1で変わり種を植えてみる事にした。
これで食糧事情も良くなるだろう。
不平を述べていたゴブリンくんたちも見た目は最悪だが殺傷力、じゃなかった。土を掘るのに向いてそうな道具を取り出し始める。
「かしこまりました。ご主人様。ところでロッサビアンコって何です「それじゃあ、まずは農地を決めよう」か」
吾輩は意気揚々と外に出る。
考えてみたら、勝手にみんながやって来てご主人と呼ばれていたが、主らしいことと言えば侵入者の撃退か寝る事くらいしかやってない気がする。
たまには用心棒以外でも役に立つところを見せるチャンスである。
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「ここら辺がいいか」
鬱蒼と木が茂る、学校の体育館程度の広さの平地を見つけた。
「あの…、どう見ても畑に向かなさそうな森なのですが…」
と、モフモフ君が言う。
たしかにそうだろう。
木と言うのは高さの3倍の長さの根を張ると言われており、人力で引っこ抜くのは不可能に近い。
だが、竜力ならどうだろう。
「うりゃ」
直径1mはある木に吾輩はかじりつくと、そのまま引っ張ってみた。
メキボキブチブチブチブチメキョガキャ!!!という聞いたことのない音を響かせ、木が雑草のように根ごと抜ける。
うん。やっぱりこの巨体なら、木でも簡単に引っこ抜けるようだ。
「す、すごい…」
今まで気が生えていた所に巨大な大穴が空くのを見てコボルト君とゴブリン君たちが驚いている。
はっはっは。すごいだろう。
今度は鉤爪で木をひっかけて引っ張ってみる。
ブチン!!!!という音を立てて主根だけがニンジンのように抜けた。
脇から出てる側根はわざと抜けやすくなっている種のようだ。
雑草でもよくあるタイプだが、こざかしい。
除草剤があればばらまくところだが、畑にそれは不味いので、鉤爪で根が埋まってそうな土をズタズタに切り裂いておいた。
こうすれば耕作も出来て一石二鳥だ。
かくして30本ほど木を引っこ抜いて平地を確保する。
「まだ、小さい雑草とかコケ蒸した岩が残ってますね」
「よしきた」
炎のブレスを軽く吹きかけ、表土一面を燃やす。
そして、岩類はめんどうだが、一つ一つ掴んで外に投げ捨てて石垣のようにする。
まるで大自然がジオラマのようだ。テンションがあがるなぁ。
「よし、あとは仕上げだな」
そういうと、爪を立てて猫のように土をひっかいて、表土を完全にボロボロに崩していく。
そして、次は指の間隔を空けてもうひと掻き。
これで畝の完成だ。
ドラゴンの体は農作業機械よりもパワフルである。
「よし、これでニンジンとジャガイモ。あと試しにロッサビアンコを植えられるな」
「だから、ロッサビアンコって何ですか?」
何か聞こえた気もするが、これから植える種を前にしていたので良く聞こえなかった。
………………………………………………と、なる予定だったのだが。
「うりゃ」
直径1mはある木に吾輩はかじりつくと、そのまま引っ張ってみて、……………根を残して折れた。
木、もろすぎ。
この巨体だと、木でも簡単に引っこ抜けるようだ。
「す、すごい…」
小枝のように折れる木を見てコボルト君とゴブリン君たちが驚いている。
なんだろう。祟り神とか恐ろしいものを見るような目で見られている気がする。
今度は鉤爪で木をひっかけて引っ張ってみる。
バキン!!!!という音を立てて竹のように割けた。
仕方がないのでひっぱったら、これも根を残して折れる。
セイタカアワダチソウに似てるような似てないようなタイプだが、こざかしい。
除草剤があっても効果がなさそうなので、鉤爪で根が埋まってそうな土をズタズタに切り裂いてみる。
こうすれば耕作も出来て一石二鳥だ………………よね?
と、思ったが、思ったより土が堅く、爪が折れそうになる。
「ふざけんな!オラァ!」
と、他の木を蹴ったら根っこを残してまた折れた。ムキー!
かくして30本ほどの見事な切り株が出来上がった。
「まだ、小さい雑草とかコケ蒸した岩も残ってますね」
不安そうな声でモフモフ君とライデンが言う。
「
炎のブレスを思いっきり吹きかけ、表土一面を燃やす。
雑草は燃えたが、切り株は湿ってて中々燃えない。
岩は捨てるのは簡単だが、木は雑草の如くしつこく残っている。
頭の中では完璧な計画だったが、実際にやってみるとコノザマである。
まあ、人間とか他の生物に都合のよいように生えてくれるのは、人間が手をかけて育てた植物くらいで、野生の植物が他の生き物に都合良く伐採とかされたら、簡単に亡んじゃうもんな。
こちらが「往生せいやー!オラー!」と何度も何度も攻撃しても、それでもしぶとく生き残るのが雑草魂というやつである。
そのあと、地面を思い切り踏みつけて地割れを起こそうとしたり、再び燃やしてみようと頑張ったのだが、
みんなから「土地がダメになります。土も、燃やしたら作物は育ちにくくなると言われています(細菌が死ぬから)」と、止められ、ゴブリン君たちが地道に根元を掘り出し、根っこを切断してから引っこ抜いたり、ある程度耕した状態の土を整える役となった。
かくして、畑はできたのだが「ご主人様は絶対に入らないでください」と、3度ほど念を押された。
うん。吾輩、小食だからね。
食べなくても死なないし、これでゴブリン君たちに自立心が芽生えるなら喜ばしいことである(乾いた笑い)
「じゃ、これがニンジンとジャガイモ。あとロッサビアンコも植えといて」
疲れた声で、種を渡す。
ゴブリンたちはいい汗かいた、という爽やかな顔で種を受け取り
「だから、ロッサビアンコって何ですか?」
と言った。
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ロッサビアンコはイタリアのナスだそうです。
ネットで変わった名前の野菜を検索したらヒットして、犬が食べてもナスは大丈夫とあったので採用しました。
魔術師オーフェンか何かで、良くわからないものの名前を最後までわからないまま終わらせるネタがあったので、やってみましたが、ネットで調べるのも面倒だと思うので、ここで種明かしをします。
植物回だけに。(春の陽気に負けない涼しさを届けながら)
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