吾輩は竜である

黒井丸@旧穀潰

第1夜 吾輩は竜である

書こうかどうか迷ってた話ですが、キャンペーンにつられてゆるく投稿しようと思います。短めの話なので箸休めなどにお読みいただけたら幸いです。


※なお今回の話は『吾輩は猫である』のネタバレを含みます


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 吾輩は竜である。名前はまだ無い。


 どこで生れていたのか、とんと見当がつかぬ。

 前世では真っ黒いギスギスした会社で「納期が…納期が…」と泣いていた事だけは記憶している。

 大学を卒業した吾輩はここで始めて社会人というものを見た。

 しかもあとで聞くと、それはパワハラ上司という人間中で一番獰悪(※どうあく。性質が凶悪で強いこと。または法律違反者。2022年4月より日本ではパワハラ防止法が中小企業にも適用されました)な種族であったそうだ。

 このパワハラ上司というのは時々我々純朴な新卒を捕えて、使い潰して食いものにするという話である。


 しかし、吾輩はその当時は大学を出たばかりで、何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。


 ただ彼の指示に従って働いて、たまに怒鳴られたりなんの役にも立たぬ業務を強制された時何だかフワフワした『このままこの会社にいて良いのだろうか?』という不安があったばかりである。


 その後、無理な納期にBGMのような罵倒。

 頭がギリギリと痛くなり、脳が委縮したような感じがして目の前が真っ暗になった…………と思ったら、ここにいたという訳である。

 おそらく寝不足と緊張とストレスで脳卒中になって突然死したのだろう。


 気が付けば、人とは異なる鉤爪の手に大きな翼。黒光りする鱗の吾輩がいた。



 湖の上で少し落ちついて自分の顔を見たのが、いわゆる竜というものの見始めであろう。

 この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。

 第一皮膚でもって装飾されべきはずの顔が鱗で覆われてまるで蛇のようだ。

 その後、他の龍にもだいぶ逢ったが……そろそろやめよっか。この口調。


 オッス。オラ、秋好昊(あきよしひろし)。


 大量に雇用して大量に退職者が出るブラック企業から、異世界の竜に転職した新異世界人1年生である。

 竜と言うのは亀のような爬虫類の仲間で、無駄に頑丈な生き物である。

 長生きなので体感的には1年しか経過してないように感じたが、同行者から『どこが新人じゃ!この50年以上生きておる老いぼれ!』と蹴られたので間違っているのだろう。


 酒甕に頭が入って危うく溺死する所だったじゃないか。

 一瞬念仏が頭をよぎり、走馬灯が走ったぞ。

 黒い猫のように。

 黒い猫のように。


 これは、その間に見聞きしたこのファンタジーっぽい世界のお話である。


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 筆者は『吾輩は猫である』を最初と最後だけつまみ読みしたという、推理作家からしたら噴飯物の読み方しかしたことがなく、今回初めて読破しました。

 坊ちゃんは全部読んでいたのでお許しください。


 …………まあ、夏目先生は推理作家ではありませんが

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