第12話

 睨み合う僕、アレティアと魔王。

 最初に起こるのは世界の奪い合いである。


「……」


「……」


「……」

 

 三者三様に自身の世界魔法を発動し、世界を奪い合っていく。

 実に静かで、世界の最上位者たちの間でしか発生しない高次元の争い。


「……ダメか」

 

 僕は世界の食い合いを諦め、世界を自身に纏わせ、絶対不可侵の己だけの世界を自分の周りにだけ作り出す。

 これで僕と言う人間の世界に他人が干渉してくることは出来ない。

 

「それもそうね」


「……」

 

 僕が諦めたのを見てアレティアと魔王も諦める。

 世界を自分の色に染め上げた結果、自分自身の抵抗を弱めればふとしたタイミングアであっさり他人の世界に飲み込まれかねない。

 完全に相手を自分の世界に引き込めなかったら一旦引くのがセオリーである。


「やるかぁ」

 

 僕は地面を蹴り、魔王との距離を詰めて黄金の剣を一振り。

 魔王の手に出現した黒い魔剣とぶつかり合う。


「援護は任せたよ」


「えぇ。任せて頂戴」

 

 僕は自分の背後をアレティアへと任せ、一切の遠慮なく魔王と剣を交える。

 黄金の剣と黒い魔剣が火花を散らしてぶつかり合い、地面を揺らしながら駆け巡る。


「……ぬぅ!!!」

 

 近距離戦では互角の僕を魔法を使って何とかしようと魔王も努力するが、その反撃の芽を確実にアレティアが積んでいく。

 僕と魔王が躍り、アレティアが後ろで悪だくみを一つ。

 

「下衆めが……ッ!ぬぅ!」


「はっはっは!僕は本体スペックも結構高いんだよ!ふんッ!」


「ぬぅ……ッ」


 もはや無限と言って良いほどの膨大な魔力を贅沢に使って魔力の濁流を魔王へと叩きつける。

 魔王もゲームのラスボスに相応しき力をしかと有している。

 決して弱くはないのだ……アレティアと魔法で打ち合い、互角。

 僕と剣で交えて互角。

 その力は圧倒的……個では僕とアレティアを上回る。

 しかし、魔王が相手しているのは僕ら二人である。


「ほい、出来た」


「同じくよ」


「……ぬぅ?」

 

 これまでの踊り、足の動かし方、体の動かし方、戦い方……僕はそのすべてを考えて行っていた。

 僕は魔王と戦いながら足で地面に巨大な魔法陣を描いていたのだ。

 あらかじめ書くのではなく……書いて直ぐでないと発動しない繊細な大魔法の魔法陣を。

 僕と同様アレティアもこの戦いの中で一つの大きな魔法を用意していた。


「……ありえない」

 

 チェック……僕たちは今、魔王へと王手をかけた。

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