第51話
レレイ王国の国王陛下並びにその奥さん、子ども……王都にいた王族すべてが処刑台に立たされていた。
その周りをドレシア帝国の兵士たちが囲み、ヤジを飛ばし、そんなドレシア帝国の兵士たちの後ろには涙を流すレレイ王国の住民の姿がある。
今まさにレレイ王国の王族が処刑されるというタイミングで僕が飛び出す。
「不敬たるぞ」
魔法を一つ。
ただ一つの魔法だけでレレイ王国の王族の方々を処刑しようと処刑台の方に集まっていたドレシア帝国の兵士たちの命を刈り取る。
「未だ講和もしていない状況で自軍が占領した王族の方々を処刑しようなどと……どんな蛮族であるか」
貴族として纏う豪華な衣装をはためかせる僕は堂々たる態度で口を開く。
「な、何者だッ!?」
突然現れた僕にドレシア帝国の兵士たちの間で動揺が広がり、誰かが疑問の声を上げる。
「ふん。この我を知らぬというのが汝らの教養の無さを見せるというのだ……よかろう、我が名乗りを聞くが良い!我はノア・ラインハルト!フェルジャンヌ王国が誇るラインハルト公爵家次期当主である!」
この名乗りに王配と言うのも追加されるけど……それは考えないことにしよう。
「フェルジャンヌ王国ッ!?」
「汝らの名は聞かぬ……これより死にゆく者のなどひとかけらの興味もない故にな」
僕は腕一振り。
それだけで魔法が発動し、蒼き炎が燃え広がる。
「これは我が炎、我が国の同盟国たるレレイ王国を守護する炎なり……蒼き炎が燃やすのはレレイ王国へと敵意を抱くものすべてである」
僕はドレシア帝国の兵士たちへと背を向け、腕を一振り。
「ただ焼かれろ」
蒼い炎が凄まじい勢いで燃え広がり、レレイ王国の王都のすべてを呑み込まんばかりで広がっていく。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああッ!」
「熱いッ!熱い……熱いぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
蒼き炎はドレシア帝国の兵士たちだけを燃やし、レレイ王国の住民や建物を燃やすことはない。
「お助けにあがるのが遅れて申し訳ありませんでした。これは私の不徳の致すところにございます」
僕はレレイ王国の王族の方々を拘束する処刑台を魔法で消し炭にし、国王陛下に対して他国の貴族が行う礼としては最大限の礼をしてみせた。
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