第35話
僕としてはフェルジャンヌ王国の実権は今後のことを考えると欲しい……だが、その代償がララティーナとの婚約となると二の足を踏まざるを得ない。
あまりにも。
「……最悪の手段がないわけでもないんだよな」
最悪ありとあらゆるものを無視して独断専行ぶちかまして全てを解決するってのも手なんだよな……そのとき、僕は全ての権力を失うことになりそうだけど。
まぁ、そうなったとしてもいくらでもやりようはあるから気にすることもないけど……。
「逃しませんよ?ノア様が逃げ出したら私のありとあらゆるものを駆使して必ずノア様を見つけ出します。アレティアにも協力を要請するかもしれません」
「……」
そうなのだ。
いくら僕でも本能で僕を嗅ぎつけるララティーナと天才たるアレティアの二人から逃げながら悠々自適な生活を遅れるとはとてもじゃないが思えない。
僕の目的は結構複雑だ。
一般的な価値観による当然の目的として魔王による人類の滅亡を防ぎたい。
前世の僕である赤城蓮夜の目的としてはハーレムを作って悠々自適なウハウハ生活を送りたい。
今世の僕であるノア・ラインハルトとしてはアレティアという天才を超えたい。
二つの人格が混ざり合っていることに加えて前世で培った一般良識に、今世の僕が培った貴族としての小を切り捨て、大を生かす残酷な一面。人の数を数値としてしか判断しない一面。
様々な要素が僕の中で絡み合い、あまりにも複雑でそれでなおかつそんなクソみたいな状態が正常である僕という人間が一つの確固たる結論を出すのは少しばかり難しい。
どうしても僕は大事な決断のところで優柔不断になってしまうのだ。
「むむぅ……」
赤城蓮夜としての目的を無視するならララティーナとの婚約が一番だ……だが、ハーレムウハウハ悠々自適生活も捨てがたい。
「そ、そんなに私との婚約が嫌なのですか……?」
「……え?」
ひどく悩んだ様子を見せる僕に対してララティーナは瞳に涙さえ浮かべながら震えた声で尋ねてきた。
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