第33話

 歩兵を置き去りにし、航空魔法部隊からの援護を受けながら快進撃を続ける僕が率いる騎兵たち。

 

「むっ……」


 これまでほとんどの被害を出さずに突貫を続けられていたのは敵の防衛網がきちんと整っていなかったからだ。


「……硬いな」


 我らの攻撃に抵抗するドレシア帝国軍の力が強固になったと感じた僕は一度馬を止めて上を見上げる。

 空から敵の状況を監視している航空魔法部隊へと視線を送る。


「……そうか」

 

 空の航空魔法部隊が僕に見せるのはバツの印。

 それが敵の魔法による妨害で敵の状況を見れないのか……それとも既に敵の防衛網が完成し、これ以上の突撃は厳しいと判断したか。

 そのどちらかはわからないが、そのどちらであっても危険なことには変わりなく、撤退の時だろう。


「総員、撤退だ。これ以上の前線の押し上げは中止だ。これより我らは遊撃部隊となり、反撃の芽を見せた敵兵を叩く。味方の歩兵が陣地を作り上げるまでの時間を作り上げるぞ」


 僕は自分に付き従う騎兵へと命令を下し、踵を返す。


「「「ハッ」」」

 

 騎兵たちは何の抗議することも、不満を覚える仕草を見せることもなく僕の命令に素直に頷いて僕のあとに付いてきた。

 

 ■■■■■


 長らく停滞を続けていたフェルジャンヌ王国並びに同盟軍とドレシア帝国軍の戦線はフェルジャンヌ王国軍並びに同盟国による中世版電撃戦により、戦線を大きく押し上げ、多くのドレシア帝国軍を包囲し、その全てを殺害または捕虜とすることに成功。

 ドレシア帝国軍に大きな被害を与えることが出来た。


「作戦は成功かな」

 

 ドレシア帝国軍が防衛拠点として利用していた砦の中でくつろぐ僕はワインを口に含みながら自分の前にいるレース、リリ、リリスへと告げる。


「えぇ……そうね。戦果としては前代未聞でしょうね……私たちがいる場所は既にドレシア帝国領内。ドレシア帝国領内にまで侵攻した国は私たちが初ね」


「いやぁー、そのドレシア帝国の記録もエゲツないけどね」


「ですが、ノア様の前には無力ですね。このままドレシア帝国にかてるかもしれませんね」


「ん?そんな上手くは行かないと思うよ……そもそも僕たちは移動させられるだろうしね?」


「「「え?」」」

 

 何気なく告げた僕の言葉に他の三人が困惑の声を上げた。

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