第15話

 フェルジャンヌ王国のノア・ラインハルトとドレシア帝国のアレティア・フォン・ドレシアが並んで立っている。

 その事実が与える驚きはかなり大きなものだろう。

 ここから見える生徒たちは全員呆然とこちらの方を見上げ、僕たちの近くにいるリスタなんかは口をあんぐりと空けて固まっている。


「諸君らはなんだ?君たちがその身に纏う衣服はなんだ?君たちが身を包む衣服はこの学園の制服であり、君たちはこの学園に通う生徒であろう」

 

 僕は空の上で口を開き、言葉を届かせる。


「君たちの隣人もまた、君と同じ学園に通う生徒である。敵国人ではなく、な。この制服を身に包んでいる限り、我らは同じ学園に通う仲間なのだ。ゆえにこうして我とアレティアは共に隣へと立ち、共に君たちへと話しかけている」

 

 僕とアレティアが仲良くしているのだ。

 自国の同盟国……陣営のトップとも言える大国のお偉いさん同士が仲良くしている中、互いにいがみ合うことが出来る勇者はどれだけいるだろうか。


「この戦争を受け、今着ている制服を脱ぎ、貴族として国に帰り、戦うことになる生徒も数多くいるだろう。当然我もその一人であり、いずれは隣に立つアレティアとも戦うことになろう。しかし、それでもまだ君たちは制服を着ている。同じ仲間としてここに立っている。であるならば、この短い間だけ。同じ仲間としていがみ合うことなく平和な学園生活を送ろうではないか。これまでお世話になった学園へと不義理を行うものではない」

 

 一体どの口が言っているのだろうか……?

 僕は心の中でそんなことを思いながらも堂々と口を開く。


「我からの話は以上である。制服を未だに身に纏う者はいつも通りに学園生活を送り、本国からの帰国命令を受けたものは今すぐに校門をくぐってこの場を後にし、己がなすべきことを為せ。我らは誇りある戦士である。決して卑怯な真似などせぬように」

 

 僕は言葉を切って再び変身魔法を発動させてノイへと戻り、ドラゴンの背中へと腰を下ろす。


「せっかくだし、僕はこのままこいつに乗って空飛びたい。いざこざに関して言えばもう大体大丈夫だと思うし、このまま撤収で」


「あっ、はい」

 

 考えるのを放棄した様子のリスタは大人しく僕の言葉に頷き、ドラゴンを操ってこの場を後にした。

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