第2話

 ぶつぶつと僕に対して文句を告げながら教材に掲載されている問題を解いていくリリスを眺めながら僕は紅茶を口に含む。


「そう言えばアーテ……アレティアは何をしているんでしょうか?」

 

 基本的には僕とともにいるアレティアの姿がないことを疑問に思ったリリが僕に尋ねてくる。


「さぁ?何かしているんじゃない?」

 

 それに対する僕の返答はそっけない。

 戦争を始めるための下準備が佳境を迎え、ちょっと忙しくなりつつある僕と

アレティアはちょいちょい世界剣魔学園を休んでいる。

 今日はアレティアがいない日である。


「……ドレシア帝国の第一皇女様を放置で良いの?」

 

 僕の返答をリリの隣で聞いていたレースが僕に疑問の声を向けてくる。


「相手はドレシア帝国の第一皇女だよ?下手に介入し、彼女をコントロール出来ると?」

 

 下手にちょっかいかけてもこっちが一方的に被害を受けるだけだ。

 介入するタイミングはしっかり図らなければならない。


「ノアにとっても厄介な相手なの?」


「厄介どころじゃないとも」

 

 僕は肩をすくめながらレースの言葉に答える。


「……貴族の人たちが何やら難しい話をしているわ」


「……そうだね。それでも俺たちだって他人事じゃない。しっかり話についていけるだけの知識を得ないと……!」


「アレスは真面目だなぁ」


 おい、やめろ。アレス。

 お前は何も学ぶな、何もするな……これ以上厄介な相手にならないでくれ。


「あいにくと俺たちの周りにはその手のプロがたくさんいるからな。ララティーナ王女殿下などから学ばないと……!」


 ララティーナ王女殿下ァ!!!

 僕の天敵になり得る数少ない……というか唯一と言っても良さげなアレスを育てるなァ!


 というか、僕が裏でこそこそやって小さな暗躍行為を一回叩き潰されているんだよ!

 アレスはそれが僕によるものだとも知らず、ただの小さな犯罪組織の小さな犯罪行為だと思って!

 これ以上アレスに邪魔されたくない!

 でも、アレスは自分で考えて介入しに行くのではなく、なんかいつの間にか事件にたまたま巻き込まれているから対処できない……!

 本物の天敵である。


「本当に真面目……私はついていけない。そう。私は不真面目!もう勉強なんてやーめた!みんなで街の方に遊びに行きましょ!」


「あっ。僕はパスで」


「え?」

 

 僕の言葉を聞いたリリスが固まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る