第72話
永劫騎士、叛逆騎士、悪鬼、怪異、悪魔、アンノウン幹部……ありとあらゆる時代で数々の異名を付けられ、恐れられてきた強者であるルーズト。
遥か昔、魔王が人類へと侵攻してきたときにも生きており、魔王との交戦して生き残った経験も持ち、アンノウン創設メンバーの一人でもあるルーズトが弱いわけがない。
「……嘘、だろ?」
伝説上の存在とも言っていい強者であるルーズトは目の前の理解出来ない光景を前に困惑の声を漏らす。
ルーズトは世界を捻じ曲げ、捻じ曲げた世界を自分の鎧として支配し利用するという規格外の魔法を使用する。
「世界が……上書きされている?」
だが、ルーズトの目の前でノアが発動した魔法はルーズトの魔法の比ではなかった。
ノアが発動した魔法は世界を上書きしていた。
「世界魔法:刻の荒野」
さっきまでいたような広い部屋はどこにいったのか。
いつの間にかノアとルーズト、レイが立つ場所は果てなき荒野へと早変わりしていた。
凄い速さで進み、僅かに太陽の光を漏らすだけの雲の下、苔むした巨大な歯車が落ちるだけで他には何もない殺風景で寂しい荒野にただ一つ。
場違いとしか言いようのないほどに豪華絢爛で巨大な玉座がノアの横に佇んでいた。
「ここは我の世界」
その玉座へと腰掛け、足を組むノアは口を開く。
「……クソが!臆してなるものかッ!」
ルーズトはノアが何をしたのか、その細部まで完全に理解することは出来ない。
しかし、それでもルーズトは臆することなく
「無駄だ」
そんなルーズトに対してノアは言葉をただ一つ。
「ほざ!?」
そんなノアを睨みつけ、怒鳴り返そうとしたルーズトの足元から急に剣が飛んできて、慌ててルーズトは後ろへと下がる。
「ここでは我が理だ。我こそが理だ。この世界の何もかもが我の一存で決まる」
「……あが!?」
そして、ルーズトは上から信じられないほどの衝撃を受けて、地面へと叩きつけられる。
「……ッ!?うぉ!?つぎゃ!?」
かと思ったらその衝撃はなくなり……いや、それどころかルーズトの体を押さえつける力そのものがなくなって空高くへと舞い上がっていく。
「ながヵ!?」
そして次には斜め後ろから衝撃が走り、ルーズトは玉座に腰掛けるノアのすぐ目の前に落ちる。
「このように重力すらも我が手の内」
ノアは自分の足元で無様に倒れるルーズトの頭へと足を乗せる。
「この世界では我が全て。我に対抗出来るものなど、同じく自己の世界を作れる者のみ……なぁ、ルーズト。汝の世界を歪める魔法は我の世界すべてを歪められるか?」
自分の身に降りかかる強大な重力を前に喋ることさえ敵わないルーズトに対してノアは疑問の声を投げかけた。
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