第73話

 ノアの魔法。

 それに対してルーズトは自分の魔法で対抗するどころか言葉を返すことすら出来なかった。


「ふぅむ。終わりか」

 

 ノアはルーズトにかけている重力の強さを更に上げ、負荷を強めていく。

 ルーズトの皮膚が裂け、血が噴き出し、口から血が溢れ、内臓が傷ついていく。


「もう動けまい」

 

 全身血だるまになったルーズトを見てノアは世界魔法を解く。


「ごっふ……」

 

 強大な重力から解放されたルーズトは口から血を吐きながら体を動かして仰向けになる。


「こりゃかてねぇな……俺様が負けた魔王の野郎も……そいつを殺した勇者の野郎もこんな感じの魔法を持っていやがるのか?」


「であろうな」

 

 ノアはルーズトの言葉に頷く。


「……くくく。世界を歪める程度で驕っていた俺様には届かねぇわけだ。長く生き過ぎた俺様の最後に本物の強者に会えてよかったぜ……殺せや」


「当然。だが、その前に少し……僕の部下であるレイに何かアドバイスしてあげてくれない?僕ってば自分が天才すぎるがゆえに何かを教えるのが苦手なんだよね」


「……え?」


「かっかっか。そりゃあ贅沢な悩みだなァ。おい。そーだな。あのガキは手札が少ねぇな。速度は良い。だが、威力がねぇ。攻撃力を上げるのが最善だが……それが難しいなら呪いやら毒を使うべきだなァ。とりあえずは魔法、毒、呪い……ありとあらゆるものに手を出し、ありとあらゆるものを学び、ありとあらゆるものを使えるようになれ。ありとあらゆる手段を使って、足掻いて足掻いて足掻き続ける。凡人に出来るのはそれくらいだァ……くくく。俺様はいつの間にか執念を忘れちまったがなぁ」


「だそうだよ?レイ。実際に戦って負けた相手のアドバイスだ。使えるでしょ?」


「……はい。とても為になります」


「そいつぁ、良かったぁ」


「じゃあ、さようなら」


「おうよ。最後の最後に……楽しめたぜ。感謝するわ」


「うん」

 

 ノアは満足そうな笑みを浮かべるルーズトの心臓へと手に持った黄金の剣を突き刺した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る