ゲームの悪役貴族に転生した僕は悪役らしく女を囲い、貴族の強権で好き放題したいと思います。でも、断罪は嫌なので主人公陣営からは距離を取りつつ……待って！？こっち来るな、ヒロインどもッ！

第68話

　片手剣を持ち、魔力を活用して戦うノアと同じような戦闘スタイルを持つレイは巨大な大剣を持つアンノウンの幹部、ルーズトと向かい合う。

「さぁ、やろうぜぇ！」

　先に動いたのはルーズトの方であった。

　力強い踏み込みでレイとの距離を詰めたルーズトはその手に握っている大剣を振り下ろす。

「……」

　レイはそれを冷静にバックステップで回避する。

　振り下ろされる大剣はそのまま床を粉砕し、多くの瓦礫が飛び散る。

「そぉらーッ！」

　ルーズトは飛び散った風魔法を発動し、飛び散った瓦礫をレイの方へと飛ばす。

「くだらない」

　だが、その瓦礫はレイへと直撃する前に彼女の体を覆う魔力の層にぶつかって消滅する。

「どういうことだぁ？テメェが使っているのは魔力そのもの……俺の知る限り魔力そのものを使う方法はないはずだが」

　魔力暴走を収める術は護剣の影だけが知る門外不出の術である。

　アンノウンの幹部であるルーズトはレイが魔力を魔法に変換せず、そのまま活用していることに疑問を抱いた。

「それをあなたが知る必要はないわ」

　魔力を足元で爆発させ、圧倒的な瞬発力を手にしたレイが一気にルーズトの背後へと回って剣を振るう。

「軽いな」

　ルーズトはそれをさも当たり前のように剣を片手で捕まえ、口元を歪める。

　どれだけルーズトの手の皮が硬いのか、素手で剣を受けとめても一切血が流れない。

「破ぜろ」

　レイはたっぷりと剣に込めていた魔力を魔法へと変換して爆発させる。

「……ッ」

　剣を素手で掴んでいたルーズトはその爆発をもろに喰らい、体をよろめかせる。

「……ぬけ！？」

　それを確認したレイがルーズトから距離を取ろうとしたのだが、がっちりと剣を掴まれているため、逃げることが出来なかった。

「この程度の爆発じゃ無理だぜ」

　いつのまにか体の態勢を立て直し、大剣を地面へと突き刺していたルーズトの拳がレイの顔に直撃する。

「ガハッ！」

　剣ごと地面から吹き飛ばされ、宙を舞ったレイはそのまま壁へと叩きつけられる。

「……痛い」

　それでもレイは口から血を吐きながら立ち上がってルーズトのことを力強く睨みつけた。