第66話

 悪魔神官アレゴス。

 自分がこの世界の真理にたどり着き、この世の上位存在である悪魔と契約が結ばれ、他人の魂を己が思うように動かせるという特殊能力を獲得したと妄想している頭のおかしいな男。


「んっ……」

 

 だが、この男の厄介なところは本当に他人の魂に干渉出来るということである。


「潰れろ」

 

 ただ一言。

 それだけで相手の魂を潰し、廃人へと変えることの出来るアレゴスが弱者であるはずがないだろう。

 しかし、だ。


「……何故だ?」

 

「効かないよ」


 僕には効かなかった。


「君に対抗できるのは僕ともう一人くらいだからね……わざわざ君がここのアジトにいるときを狙わせてもらったよ」


「……ありえない。ありえない。ありえていいはずがないのだッ!私の力が!悪魔の力が効かぬなど!」


 アレゴスの力は悪魔との契約によって獲得した力でも何でもない。

 魂に干渉する力はアレゴスの一族のみが持つ特異能力である。

 まぁ、この能力に覚醒するのはその一族でも数百年に一人という低確率なんだけどね。

 ちなみにゲームの主人公であるアレスのお仲間である彼と同じ平民の少女、リリスはアレゴスと同じ一族で魂に干渉する力を持つ子だ。


「君の能力は悪魔によるものなんかじゃない。ただ君の一族に宿る力だとも。君の天才性ゆえの力さ」

 

 アレゴスは魂に干渉する力だけでアンノウンの幹部にいる男だ。

 その力が僕に通用しない以上、アレゴスが僕に勝てる道理はない。

 

「……くだらぬ。くだらぬ戯言だ」

 

 僕の言葉をアレゴスは実に冷静な様子で否定する。


「君のくだらぬ戯言にはどうしようもないほどに致命的な欠陥がある。それは君が私の能力から逃れる術を証明していないことだ。君の言う通りに私の能力が一族によるもので、この力は私だけのものでなかったとしよう。では、どうやって君は私の能力から逃れたと言うのかね?私の魂に干渉する力に抵抗するには同じく魂に干渉する力他ない……君が私の一族であると?ありえないな」

 

 ラインハルト公爵家とアレゴスとの一族に血縁関係はない。

 うちの家は貴族としか婚約しないからね。平民であるアレゴスの一尾と血が混じることはない。


「ふふふ……そんな残酷なことを僕に聞かないでくれよ。人体実験の果てに再現したなどと他人に言えるわけがないだろう?」

 

 僕はアレゴスの言葉に対して思わず小さな笑みをこぼしながら、アレゴスの言葉を否定した。

 僕はアレゴスやリリスと同様の魂に干渉する力を再現することに成功しているのだ。

 黒い影の封印もこの魂に干渉する力によるものである。

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