第52話

 ガリアが世界剣魔学園に通いだしたこともあってVIPルームにこもるのではなく授業に参加するようになった僕とアーテ。

 何なんだこいつ……という先生たちの視線を浴びながら僕たちは学園生活を送っていた。


「踏ん張りが甘い。もっとしっかり立って」

 

 僕は自分の前で剣を持つガイアを足払いで転ばせる。


「あっ」

 

「はい。これで一回死亡っと」

 

 僕は転んだガリアの首元に剣を突き付ける。

 これでフィニッシュだ。

 僕は今、世界剣魔学園にある模擬戦をするための部屋でガリアと二人、模擬戦に励んでいた。


「集中しすぎて視野が狭い。一つのことだけ見てちゃダメだよ。実戦じゃ手も足も当たり前のように使う。剣にだけ集中していればいいわけじゃないよ」


「……はい」

 

 ガリアは僕の言葉に頷き、のろのろと立ち上がる。


「……なんというかここまでボコボコにされると少しだけ腹が立ってくるわね。いや、私ではノイに敵わないことくらい百も承知だけど」

 

 一度、黒い影との戦いでガリアは全力の僕を見ている。

 ガリアじゃ逆立ちしても僕に敵わないことは理解しているだろう。


「こう、なんかびっくりさせるようなこと出来ないかしら?」


「ふっ。無理だね!僕がびっくりするような事態になんて早々ならないよ」

 

 この世界のすべてを手の平に乗せ、自分の思うがままに動かすプレイヤーであるという自負が僕にはある。

 基本的に僕が驚くなんて事態にならないだろう。


「つまんないの」

 

 僕の言葉に対してガリアが不満げに声を上げる。


「そんなことで不満げな表情を浮かべるなし。力関係を思い出させてあげようか?」


「……ごめんなさい」

 

 僕の言葉を聞いてガリアは素直に謝罪の言葉を告げる。


「よし……じゃあにか」

 

 突然。

 僕の言葉を遮って今、僕とガリアのいる部屋の扉が大きな音ともに開けられる。


「ん?何?」

 

 僕は部屋の扉が急に開けられたことに少しだけ驚きながら、そちらの方へと視線を送る。

 そして、僕はすぐにその行為を後悔することになる。


「……は?」

 

 扉の方へと視線を向けた僕は今、見えているものが信じられず困惑する。


「ふふふ」

 

 僕はゲームの主人公を連れ、扉の前に立っている……。


「ようやく見つけましたわ!ノア様!」


 ララティーナ王女殿下を見て驚愕のあまり呆然と口を開けることしか出来なかった。

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