第25話
普通の人間にはなくて僕にはあるものが存在する。
それは圧倒的な魔力量とその操作技術。
これを使いさえすればトイレから人知れず脱出。
十秒もかからずにマルス学園の入学式が行われる学園の大広間へと移動出来ることが出来る。
僕は男子トイレの入り口でガン待ちしているララティーナ王女殿下を置いてマルス学園の入学式が行われている大広間へと移動していた。
これは逃亡ではない……勇気ある撤退なのだッ!この撤退は僕の将来に大きな実りをもたら。
「あぁ、こんなところに居ましたか。ノア様」
さないわ、これ。うん。
当たり前のように僕の隣に座り、話しかけてきたララティーナ王女殿下を前に僕は遠い目を浮かべる。
……早くない?もうちょい遅く来ると思ってたんだけど……時間的に僕が男子トイレからいなくなった瞬間に早歩きで大広間へとやってきたくらいの時間なんだけど。
「いきなり気配がなくなったからびっくりしちゃいましたよ」
……トイレの中でも全力で気配を消していた僕の気配を感じ取っていたの?勝てないやん。
「す、すみません。もう戻っていると思っていましたので……」
「なるほど。そうでしたか。あぁ……それと私に敬語は不要ですよ?マルス学園において貴族の位は関係ない。全ての者が平等なのですから。普段の口調で構いませんよ?」
「……」
マルス学園において既に形骸化しているルールを持ち出して僕に自由に喋るよう提案してくるララティーナ王女殿下。
これ、なんか断ったらヤバいと僕の直感が警鐘を鳴らしている。
「うむ。では、そうさせてもらおうか。汝も自由な口調で構わんぞ?」
その警鐘に大人しく従った僕は口調を崩し、僕がいつもしているような偉そうな口ぶりで言葉を話す。
「いえ。私はこれがデフォルトですので。問題ありません」
「うむ。ならば好きにするが良い。我は他者に対して何かを強制するつもりはないゆえにな。我は我であり、至高。他者がどのようなことをしようと我は揺るがん」
「ふふふ。それは良い考えですね」
「当然。我の考えは常に完璧なのだから」
僕は己の直感に従ってララティーナ王女殿下の地雷を踏まないように気をつけながらマルス学園の入学式が始まるまで彼女と言葉を交わし続けたのだった。
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