第8話
「クソッ!お前がッ!お前がッ!」
「ご、ごめんなさい……父上」
「何故あれがただのハッタリでしかないとわからなかった!?堂々としていれば良いものよッ!お前がもっとしっかりしていればッ!そんな下らない恰好をしているからそうも軟弱なのだッ!」
荒れ狂う男の声。
「ごめんなさい……」
それに対してただただ委縮することしかできない少女のような声。
「クッソ……がぁッ!」
「ヒッ!?」
怒りを露わにしていた男がとうとう拳を振り上げ、一つ。
悲鳴が上がる。
「何してんのさ」
レグの拳がガイちゃんへと振り下ろされる直前、僕は二人の間に入ってレグの腕を掴む。
「なぁ、レグぅ?」
「……ッ!?いつの間に!?」
「あっ……」
突然の僕の登場にレグは驚愕し……ガイちゃんは僕の服の裾をそっと掴む。
ふむ?なんで僕の服の裾を掴むんだ?まぁ、良いか。
「ど、どこから入ってきた……」
「口の利き方に気をつけろよ?おっさん」
「……ッ!そ、それはこっちのセリフだッ!!!」
「はぁ?既に失脚が確定。死ぬ一歩手前にまで行っている状態の貴方が何言ってんだ?おっさんは負けたんだよ」
「きゃっ」
僕は自分のすぐ後ろにいるガイちゃんの体を抱き寄せ、彼のきれいな顔にほおずりする。
「ぅん」
「この子は僕と共に成長し、一緒に外務大臣となるのだよ?これから落ちるだけの君とは違ってこの子は僕と上がっていくの……お前如きが手を出していい相手じゃねぇんだよ」
「……ッ!す、すべてはお前があんなものをでっち上げるから!」
「はっはっは。手の平で踊らされるお前が悪い……というか、アンノウンと繋がりがあるのは本当だろ?」
……まぁ、アンノウンと繋がりを持っている貴族はかなり多く、うちの国にも普通にいるんだけどね。
「グッ……」
「ここまでなら僕は何も見なかったことにしてやるよ……だが、これ以上粘るというなら別だ……お前さんだって命は惜しいだろ?」
「……ッ」
レグはこれ以上ないほどに表情を歪めて歯ぎしりした後、部屋から出ようと扉の方へと向かう。
「そこの男に精々その見た目を使って媚びるんだな。もはや国は我が家の味方足りえない。我が家の存続にはラインハルト公爵家の庇護下になければ不可能。ガイ。ラステア公爵家を任せた」
レグは最後に僕の腕の中にいるガイちゃんに対してそんなアドバイスを残して部屋から退出していった。
……ふんっ。たぬきめ。
あえて自分が悪役を演じることで僕に対するガイちゃんの好感度を上げさせたな?
まぁ、僕に利点しかないから別に構わないけどね。
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