第7話

 波乱万丈だった会談を終えて、僕は自分に与えられた一室の椅子に深々と腰をおろしていた。


「ふぅー、なんとかうまく行ったぁ」


「……まさかここまでとんとん拍子で行くと思わなかった」

 

 僕と同じ部屋に居座っている父上が僕の言葉に対して


「まぁ、今回の問題は下手すりゃ戦争にまで繋がりかねない問題ですからねぇ。向こうも強気には出れないでしょう。国力的には圧倒的にうちが上ですから。正直に言って僕が示した証拠はアンノウンとラステア公爵家の繋がりを示すものでしかなく、ララティーナ王女殿下の誘拐事件に関与していたかどうかはわかんないんですけど」


「よくもまぁ、それだけの情報であそこまでの絵図をかけるものだ。最近婚約戦略などで急速に勢力を盛り上げつつあるルクス連合国に釘を刺し、リーミャ王国の外務大臣の力を削り取り、大恩を売りつける」


「ふふふ。父上ならリーミャ王国から我が国が欲しいものすべてを手にしてくれると信じていますよ」


「当然だ。手負いどころか瀕死状態にまで追い込まれた相手など私の敵ではないよ。護剣の影の存在を教えずにリリスト国王陛下に私たちの計画に加担するようお願いし、首を縦に振らせた私の交渉術を舐めないでほしいな」


 護剣の影の存在を父上には伝えたが、リリスト国王陛下には伝えていない。

 我が家がどこからか持ってきた謎の情報ということになっている。


「まぁ、おかげでこれからしばらく私も内通を疑われることになりそうではあるが。これからは下手なことは出来ないし、今回のような無茶は出来ないからな?」


「わかっていますよ」

 

 僕は父上の言葉に頷き、自分の手にあるカップを傾け、紅茶を口に含む。

 次に動くのは僕ではなく相手だ……今回のような無茶はしばらくないだろう。

 魔王の存在を知っているのは僕だけじゃない。原作知識も何もなしにただただ自分の頭脳だけで魔王の存在に気付いた化け物のようなチートキャラがこの世界にはいるのだ。

 次の手を打つのは僕のようなチーターではなく本物の天才。

 

「……どうなるのかねぇ」

 

 相手は本物の天才。

 まず大前提として相手が僕のやりたいことを理解してくれるのか、そして相手の思考を所詮は紛い物でしかない僕が理解することが出来るのか。


「まぁ、考えても仕方のないことだけど」

 

 人類の敵たる魔王に勝つ。

 出来れば僕の敵なり得る主人公なしで魔王を倒せるようにしておきたいよね。出来るだけ主人公に力をつけさせたくはない。

 人類が一丸になれれば魔族相手でも勝てると思うんだよなぁ……。

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