第2話

 フェルジャンヌ王国はリストア大陸の中でも二番目の国力を持つ大国である。

 そんな大国と国境を接する国の一つであるリーミャ王国はフェルジャンヌ王国にとって最大の同盟国であり、百年以上友好的な関係を築いている友好国である。

 

 当然長年外務大臣を歴任してきたラインハルト公爵家はリーミャ王国との繋がりが強く、それに比例するようにラインハルト公爵家と同じようにリーミャ王国内で外務大臣を歴任してきたラステア公爵家とも幾度も政略結婚を交わすほどに繋がりが強固である。


 今から50年ほど前だろうか?

 互いの家の嫡男同士に経験を積ませるため、外交の練習として双方の嫡男の年が十二歳を超えた段階で嫡男同士が主体となって会談を行う行事が出来たのは。

 当然この会談はあくまで嫡男同士の練習なので重要なことは話されないが、それでも会議の緊迫とした空気感を学ぶことの出来る少ない機会である。


「……一ミリも動じておらぬな。私もかなり緊張したものだが」

 

 フェルジャンヌ王国とリーミャ王国の国境部にある巨大な屋敷の一室でくつろぐ僕に対して少しばかり呆れたように父上が口を開く。


「僕は僕だからね」


 僕はそんな父上に対して答えになっていない答えを返し、机にあるカップを掴んで紅茶を口に含む。


「ふむ。実にうまい」


「今年は少しばかり特殊で両王国の国王陛下も参列される大規模な会議になるのだが……私の知らぬ間に我が息子が大物になっておる……」


「父上の教育など必要なかったということですね」


「辛辣だな……」


「それが父上の教育の結果ですよ」

 

 普通に考えて四年間ずっと闇へとその身を浸している僕の胆力が鍛えられないわけがない。


「むむ……手厳しいが、何も言えんな。まぁ、立派に育ってくれているようだから良いけ……ど……むむ。立派か?」


「立派ですよ……女を孕ませるのも貴族の務めですしね」


「おぉう……」

 

 僕の言葉に対して父上がなんとも言えない表情でなんとも言えない声をあげる。


 ちなみに僕、12歳……精通を迎えたが未だ童貞。

 毎日のように一緒に寝ている人間に対して今更よっしゃ!抱くぜ!と言えず未だ童貞。

 タイミングが、ない……。

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