第34話
「ふぅー」
なんともまぁ、小狡い手でリューエスの命を刈り取った僕は息を吐き、体を伸ばす。
暴走状態にあった魔力を静め、その全てをコントロール下において自分の体に収納する。
魔力が暴走状態じゃなくなったことで逆立っていた僕の前髪も元の状態へと戻る。
……にしても、だいぶ魔力が増えたな。今回の魔力暴走で僕の魔力は数百倍にもなっていた。
「……流石にちょっとダサすぎたかな。いや、でも本気のリューエスと今の僕が戦ったら辺りは吹き飛ぶし、レイも巻き込まれちゃうしな……」
流石にもあんまりな決着の仕方にやった本人である僕がなんとも言えない気持ちを抱えることとなり、ぶつぶつと自己弁護の言葉を呟く。
「ノア様────ッ!!!」
そんな僕へと伝わってくる強い衝撃。
遠巻きに僕とリューエスの戦いを見ていたレイが僕へと抱きついてきたのだ。
「あぐっ」
未だ八歳児である僕は既に中学生ほどの年齢であるレイに抱きつかれ、あっさりと地面へと倒れ伏す。
「ノア様ッ!ノア様ッ!ノア様ァァァァァァァアアアアアアアアアアアアッ!!!」
だが、レイはそんなこともお構いなしで僕に自分のほっぺを擦りつけ、最大限の愛情表現を見せてくる。
「良かったぁ……良かったですぅ」
「心配させて悪かったよ。それは謝るから退いてくれ。重い、起き上がれない。地面で一緒に転がるのは辞めようぜ」
「おもっ!?」
僕の言葉を聞き、レイは大きなショックを受けたような表情を浮かべる。
「……女の子相手にデリカシーないこと言ってすまなかったよ。ほら、ショックから立ち直ってくれ。これから、サクッと他の拠点も潰して回るつもりなんだから」
「は、はいですッ!あぁ……ッ!?ご、ごめんなさい!」
僕の言葉にレイは素直に頷き、そして、慌てた様子で立ち上がる。
「別に気にしてないから良いよっと」
僕はゆっくりと立ち上がり、自分の体についている土を払う。
「さて、と。最初に掴んだ大きな勝利。それを最大限活かすために動きましょうかね」
「はい!」
僕の言葉にレイは大きく頷いたのだった。
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