第33話
どこまでも不遜な態度で臨む僕。
「ハッ!何も出来てなかった奴が偉そうに」
そんな僕をリューエスは鼻で笑う。
「自分の意思で魔力暴走なんて引き起こすから何事かと慌てたが……所詮は魔力暴走だ。確かに魔力の総量は増えるが、だからと言って魔法の威力が上がるわけでも身体能力が向上するわけでもねぇ。所詮何の変化もありゃしねぇ」
リューエスの言っていることは基本的には正しい。
所詮はただ、魔法を発動させるための元である魔力の量が増えたに過ぎない。
「本当にそうであると思うのなら期待外れも良いところだよ」
だが、魔力とは魔法を発動させる根本的な力であるということを忘れないで欲しい。
「我が意に応え、荒れ狂え」
僕の体から紫色の光が溢れ、薄暗い森を明るく照らす。
「……ァ?」
ただただ純粋な力そのものである魔力が僕から溢れ、目に見える形で姿に現れる。
輝く紫色の光の渦は僕の手元に集まってくる。
「我が手に灯れ、英雄の剣よ」
僕は腕を一振り。
ただそれだけで自分より溢れ出す膨大な魔力を完全に支配し、一つの剣にして見せる。
「ただ剣を作っただけで何がしたいんだ?」
「やればわかる」
僕は自分の手にある漆黒の剣を構えることもなく無造作に一歩を踏み出し、リューエスへと近づいていく。
「……ほら」
そんな僕に対し、リューエスは疑問を感じながらも手に持っているハンマーを勢いよく振りかぶり、僕の方へと叩きつけてくる。
「……ッ」
僕はそれを剣で受け止める。
剣はハンマーを容易く斬り裂くなんていう奇跡は起きず、普通にぶつかって競り合う。
「マジで何がしたいんだ?お前」
それからほんの少しほど、ハンマーを剣で受け止めた僕はリューエスの圧に競り勝てず、ジリジリと押し込まれている。
そんな僕に対してリューエスは呆れたような声を上げる。
「こういうこと」
そんなリューエスへと言葉を返しながら僕は魔力で出来た剣を……ただの力の奔流へと戻す。
ハンマーを受け止めていた魔力の剣が質量を持たなくなったことでリューエスのハンマーは勢いよく地面へと振り抜かれ、めり込む。
「ァ?」
ハンマーを回避した僕は一度力の奔流へと戻した魔力を再び剣へと変え、リューエスの首へと迫る。
「……ぁ」
ハンマーを地面へと振り抜き、致命的な隙を晒していたリューエスは僕の剣を避けることが出来ず、そのままリューエスの首は僕の手によって簡単に断たれた。
「びっくり初見殺しだよ?」
僕は地面を転がるリューエスの首に向けてそう笑いかけた。
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