第10話
年に一度。
僕の住まうフェルジャンヌ王国が王都に国王、各大臣、侯爵以上の当主……国家を運営していく中でいなくてはならない人たちが集まって会議する王統会議。
そんな会議が開かれている最中に起きた王女誘拐という大事件に、ラインハルト公爵家領内で誘拐された王女が発見され、八歳のラインハルト公爵家嫡男が誘拐された王女を連れてやってくる。
王宮全体が大騒乱、大混乱となり、ラインハルト公爵家の責任を追及する貴族たちとそれに対抗する僕の父上。
色々と大事な王統会議が混迷を極めている……。
そんな中、僕は父上の許可を受けて王都を散策していた。
「うーん。やはり、王都。活気はうちの街以上か……」
ラインハルト公爵家の邸宅が存在する公爵家領最大の街、ルルーシア。
この王都は僕たちの誇るルルーシアよりも遥かに活気に満ち溢れていた。
「ぐぬぬ。まぁ、当然ではあるけど……悔しいものは悔しいね」
王都よりも活気がある公爵家領内の街とかおかしな話ではあるが、それでも色々と思うところがあるのだ。
「まぁ、それは僕が大人になって発展させれば良いでしょう……とりあえずは王都観光を楽しもうとしよう」
僕は活気あふれる王都の街を歩く。
やはり、王都観光と言えば買い食いだよねぇ。
「おっちゃん、チーズ串焼き一本」
僕はチーズの良い匂いを漂わせる屋台へとより、チーズの乗っかった串焼きを売っているおっちゃんへと声をかける。
「あいよ!少々おま」
「ごめん、おじさん。注文を二本に変えてもらえないかしら?」
僕の注文に対して返される屋台のおっちゃんの言葉は一人の少女に遮られる。
「……ッ!?」
遮った少女……そちらの方に視線を送り、その姿を確認した僕は驚愕に体を震わせ、思わず口を開く。
「ららて……っ」
「だーめ」
だが、そんな僕の驚愕の言葉はそっと僕の口元まで伸びた少女の白く細い人差し指によって止められる。
「ララ。そう呼んで?のーくん」
屋台のおっちゃんの言葉に割り込んできた少女……ララティーナ王女殿下もといララは僕に対していたずらっ子のような笑みを向けていた。
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