第9話

 なんとか王城にたどり着いた僕たち一行。


「はぁー」

 

 急なララティーナ王女殿下の帰還に慌てふためく王城の中、とりあえずと言った雑な感じで適当な部屋に滞在するように言われた僕は言われた通りの部屋に大人しく滞在していた。


「緊張したぁ」

 

 部屋に置かれていたベッドの上に僕は寝そべり、精魂尽き果てていた。

 自領でララティーナ王女殿下が暴漢の手に落ちるという大事件……自分の首が飛んでもおかしくないような状況であったが、とりあえずまだ僕の首は繋がっている。

 ララティーナ王女殿下をなんとか無事に王都にまでお連れできた。

 とりあえずひと段落つけると思って良いだろう。

 

 後は僕の父上がなんとかしてくれるはずだ。

 僕の父上は決して無能ではないどころか、交渉に関して言えば全貴族の中で最も上手い。

 きっと無事にまとめてくれるだろう……もし、無理でもララティーナ王女殿下が僕の命だけは助けるよう請願してくれるはずである。


「入るぞッ!息子よ!」

 

 部屋の中で完全に気が抜けていた僕を驚かすように父上の大きな声が響き、問答無用で部屋の扉が開けられる。


「……ノックくらいはしてよ」

 

「そんな暇もない急用ということだ!」

 

 ガイスト・ラインハルト。

 現ラインハルト公爵家当主であり、外交官の長である外務大臣を勤める僕の父上である。


「それで?状況は?」


「まず、自分が暴漢に襲われるララティーナ王女殿下を自領の街で発見、保護。暴漢は投獄済みで騎士にはすぐにでも裏組織への襲撃が行えるよう準備を整えさせ、ララティーナ王女殿下を発見した街は封鎖するよう命令を下す」


「うむ」


「ここに来るまでは特に問題なし。道中、リスティヌス侯爵当主とブルグント伯爵家当主の歓待を受けたが、何の約束も交わしていない。おそらくは僕の見定めが目的。町を出発してすぐの頃は何者からかの襲撃を六回確認。一人は捕虜とし、他は皆殺し。道中捕まえた捕虜は後程父上に引き渡すよう我が家の騎士に伝えてある。まぁ、ざっとこんな感じ」


「うむ……実に素晴らしい。完璧な対応だ。よくぞ己だけで決断し、ララティーナ王女殿下を王都にまで運んでくれた。大事は時が経てば経つほど大事となる。迅速な対応、感謝しよう。ここから先は父である俺に任せてくれ。必ずや我が家を守って見せよう」


「任せたよ。父上……僕はそうだな。余裕をかまして王都の観光でもしていようかな」


「うむ。しておるが良い。外出の許可はこの俺が出そう」


「ありがと。父上」

 

 外出の許可は貰った……この許可は王都での外出許可だけでなく、数日前の僕の外出の許可でもあるよね?

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