第4話

「通行止めだよー」

 

 僕は建物の屋根から少女を抱えて走る三人の薄汚い男どもの前に降り立つ。


「な、なんだ!?このガキ!?」


「一体どこから!?」


「……ッ!?」

 

 いきなり現れた僕を前に三人は動揺し始める……ここで臨戦態勢に入りもせずに動揺するだけ素人だな。


「い、いや!テメェのようなガキに何が出来る!やっちまうぞ!」


 三人のうちの一人がそう叫び、隠し持っていた短剣を取り出して僕の方へと向けてくる。


「そ、そうだな!」


「丸腰のガキ一人来たところで何も変わりやしねぇ!」

 

 それを皮切りに他の二人も不敵な笑みを浮かべ始め、喧しく騒ぎ始める。


「ヒヒヒ……お前も変な正義感を働かせて俺らの前に立たなきゃ死ぬ羽目にならなかったのになぁ?」


「やっちまうぞ!」


「いや!テメェは抱えている少女のことをしっかり見とけよ!」


「ハッ!ガキ一人くらいこのガキを抱えた状態でも一方的にボコボコにしてやれるよ!」


「まぁ、それもそうか!がッはッはッは!」


「そうかい……そりゃよかったな」

 

 僕は男どもの言葉を適当に流しながら地面を蹴り、拳を構える。


「ふっ」

 

 そして正拳突きで少女を抱えた男のお腹を一突き。


「ぐふっ!?」 


 お腹に重たいものを一発喰らった男はそのまま崩れ落ち、抱えていた少女をその手から落とす。


「よっと」

 

 僕はあと少しで地面に落ちると言った寸前のところで少女をキャッチする。

 キャッチした少女の顔は男たちに着させられたであろうボロボロの服についている顔を完全に隠すほどの大きなフードによって隠されているため、よく見えない。

 ……貧相な体つき。まだ若いな。

 

「大丈夫かい?」


「えっ……あっ!だ、大丈夫です!」


「それなら良かった……待ってて。とりあえず他の二人もサクッと倒しちゃうから」

 

 今の僕はただの市井のガキと言うことになっている。

 ここでいつものように偉そうにするわけにはいかないだろ……う?


「……は?」

 

 フードによって隠されていた少女の素顔。

 それが見えてしまった僕は固まる。


「え?ちょ……は?」

 

 自分の手元に収まっている……スラム街の男どもに捕まっていた少女。

 その少女の顔に僕はひじょーに見覚えがあった。びっくりするくらいものすごく身に覚えがあった。


「え、えっと……どうかしましたか?」


「い、いや……なんでも、ない、です?」

 

 なんで……なんで……なんで、ここに王女様がいるんだよぉ!!!大事件じゃねぇかッ!

 僕の手の中にいる少女……それは僕と同い年であるこの国の第二王女殿下、ララティーナ・フォン・フェルジャンヌであった。

 

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