ゲームの悪役貴族に転生した僕は悪役らしく女を囲い、貴族の強権で好き放題したいと思います。でも、断罪は嫌なので主人公陣営からは距離を取りつつ……待って!?こっち来るな、ヒロインどもッ!

リヒト

第一章 悪役転生

第1話

「……なんでこいつなんかに」

 

 きれいな銀髪に黒と赤のオッドアイを持った齢八歳児……が、映った鏡の前で僕は項垂れていた。

 先ほど階段で躓き、転倒。

 頭をぶつけた結果、脳内に電流が!

 そして何故か地球と呼ばれる星で普通の高校生として生きていた記憶を思い出した僕は鏡が備え付けられているトイレで自分の姿を確認し、項垂れていた。

  

 きれいな銀髪に黒と赤のオッドアイを持った少年……そして、別に前世の記憶を思い出したからと言って別に忘れたわけではない今まで生きてきた記憶から察するに僕が転生したのはラインハルト公爵家のノア・ラインハルトであると断言できる。

 

 ノア・ラインハルト。

 ゲーム『スタフティ』の悪役として登場するクズとしか言えないような悪役貴族であり、最終的に主人公によって殺される男である。


「まぁ……心配する必要は特にないか」

 

 主人公に殺される運命にある。

 その事実は一見実に重いように見えるが、その未来さえわかっていればそれを避けるよう動くことなんてそこまで難しくないだろう。

 

「ふふふ……二度目の人生。転生先は特権階級。ここで主人公に殺されないように品行方正に生きるとかもったいないに決まっているよなぁ」

 

 僕は笑みを浮かべる。

 自由になんでも出来る人生……それを捨てて真面目に生きるなんてありえない。


「この記憶は良いものだ……この先、実に動きやすくなる」

 

 僕は自分の転生先に満足し、頷いてトイレから出る。


「の、ノア様。長くトイレに入っておられましたが、大丈夫でしょうか?」

 

 トイレから出た僕を出迎えたのは一人の若いメイドであった。

 彼女は僕の心配を口にしてくれる……。


「ふん。貴様に心配されるような我ではない」

 

 それに対して僕は傲慢不遜な態度で口を開く。

 前世にいたら絶対に距離を置かれる偉そうな痛い口調だが、実際にこの世界の僕は偉いのでこの口調でも許される。


「す、すみませんッ!」

 

 完全なる理不尽。

 僕の言葉などただの理不尽でしかないが、それでもメイドは顔を青ざめて僕へと頭を下げて謝罪の言葉を口にする。


「くくく……謝罪する気があるのか。良いではないか。今宵、我のベッドに来い。それで贖罪としてやろう」

 

 そんな彼女に対して僕は思いつきで命令を下す。


「……ッ!は、はい。わかり、ました」

 

 平民でしかないメイドに公爵家の長男である僕の命令を逆らうことなど出来ない。

 彼女は震える体を押さえつけ、僕の言葉にただ頷くしかない。


「くくく……夜の時間が待ち遠しいなぁ?」

 

 僕は不気味な笑みを漏らしながら廊下を歩きだした。

 

 ■■■■■


 夜。


「失礼します」

 

 震えながら僕に呼びつけられたメイドが無駄に広い己の部屋へと入ってくる。


「寝ろ」


「は、はい……」

 

 メイドは僕の言葉に従って僕の寝るベッドへとその体を倒す。


「よっしょっと」

 

 僕は一切の容赦なくメイドの柔らかい体へと抱き着き、魔法によってつけられている部屋の明かりを消す。

 ちなみに前世の僕は童貞じゃない……女性の体に触れるだけでドキドキするほど初心ではない。


「おやすみー」


「え、あっ……はい」


 ふふん!良い匂いだ!……まだ僕は精通もしていないクソガキである。

 まだ添い寝で満足出来る体である。

 

「すぅ」


 女の良い匂いに包まれて寝る……ふふふ、実に良い生活じゃないか。

 僕はそんなことを考えながら意識を闇へと落とした。

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