第2話 エルフとの出会い

 「うわっ!」扉を開けた瞬間、地下室全体がまばゆい光に覆われた覆われた。しばらくの間、俺の網膜を焼き焦がすかの様なまばゆい光によって、目を開けることができなかった。


 数秒後、少しずつ慣れてきたのでそーと目を開けると、扉の中には青空が一面に広がる広大な大地が見えた。


 おいおいここは地下室の保冷庫の中のはずだろう?


 何で光が、何で大地が?風が?そして小鳥のさえずる鳴き声が聞こえる?


 恐る恐る扉の中に足を踏み入れてみると


 うぉ!な、なんだ!


 体中のいたる所にある約500万箇所の毛穴から、何かが入ってくる感覚がした。無理やり押し入ってくるというよりも、むしろ俺の方から望んで取り入れている様な感じがした。


 そう、カラカラのスポンジがこの時を待っていたかの様に、体中の全細胞が何かを吸い込んでいる、そんな感覚がした。


 「は~」1分間ぐらい続いた感覚が終了した。いやーびっくりした。一体何だったんだろう?でも体、心が元気?になった様な感じがする。


 それにここはどこだ?


 もちろんも来たことも無い所だ。


 地下室においてある保冷庫から来たはずなのに、温かい日差しの中、そよ風の音が聞こえる。遠くの方からは川のせせらぎの様な音も。


 俺が入ってきた保冷庫の扉は木々に囲まれて見えにくくなっており、おかしなことにステンレス製であった扉が、こちら側から見ると木の素材に変わっていた。


 また俺が立っている場所は木々が点在する平原のような場所であった。日差しも心地よく、何とも気持ちのいい場所であった。


 「はー気持ちい」と言いながら体を思いっきり伸ばした。


 そういえばと我に帰り、先ほどの何かが体に入ってくる感覚は何だったんだろうと思い、自分の体に異変が無いか隅々まで確認をしていると、後ろの方から何かが近づいてくる気配を感じ振り返ってみた。


すると後ろの方から見知らぬ女性が「と¢さ£―、あ#い&~あか!」と、大きな  声を出しながら俺の方に向かって駆け寄って来てた。


 「友三ザーQ⋄、会いskかった!」と、体ごといきなり抱きついてきた。俺は女性の勢いに負けて、彼女と一緒に倒れこんでしまった。


 彼女は倒れこんだ事なんて全然気にせず、更に抱き付いた両手に力を込めて「友三ザーQ⋄、ともいskか!」と言ってきた。


 うん、ドラマのワンシーンみたいで悪い気はしない。いやいやどちら様でしょうか?


 一言でいうと美しい北欧系の女性であった。


 背丈は175㎝の俺より少し低い位。170cm位だろうか。緑を基調としたサーコートを見事なボディーラインで着こなしていた。


 金色でとても艶やかな髪。瞳はエメラルド色で大きくぱっちりとしており、小さいけれどもはっきりとした輪郭を備えている鼻。チャーミングな唇。そうキャス〇ン・ニュー〇ンにそっくりでついつい見惚れてしまった。


 しかしただ一転違う点があった。


 金色の長い髪の毛の隙間から見えた耳が、長かった。


 俺は慌てて立ち上がりながら「俺は友三ではないです」と言うと、その美しい女性も立ち上がり「友⋄三⋄は?¢ぞう£うlは?」と何度も俺の肩をゆすって聞いてきた。


 友三さんにすごい思い入れがあるんだろう。俺の肩をゆする力が強い。


 「友三さんはどこにいる⁉」と俺から離れたかと思うと、辺りをきょろきょろと探し始めた。


 友三さん?ああもしかして友三爺さんの事を探しているのか?

 

木の上を見ている。鳥じゃないんだからそんな所にはいないと思うんだけど...。


 あの娘は俺が友三爺さんと一緒に来たと思っているのだろう。でも何で友三爺さんのことを知っているんだ?ただのスーパーの爺さんだぞ、こんな知らない場所の美少女が、何でうちの爺さんを知っているるんだ?


 謎は深まるばかりである。


 そして驚いたことに徐々に彼女の話す言葉が聞き取れるようになってきていることだ。俺は英語など話せないし、ましてや聞き取りも苦手である。英検は準2級でTOEICは...572点である。


 まあそんなことはおいといて、俺たちは近くにあった倒れた大木に上に座り、友三爺さんのことを伝えることにした。

 俺の爺さんである友三は、30年以上も前に亡くなったこと、そして俺はその孫であることを告げた。


 「友三さん、人族だものね。私たちエルフ族だったらよかったのに」と爺さんが死んだことを知って寂しそうに呟いた。


 それよりも、なに、今なんて言った?エルフ?


 「私はエリー。昔、友三さんに助けられた者」


 「私、いや私たちエルフ族を助けてくれた大恩人。しかし、少しの間だけエルフの村で暮らしたら、友三さんはまた旅立ってしまったの」


 やっぱりエルフと言った!やっぱり現実離れした美しさと、見たことのないようなとがった耳。サーコートを着ている日本人、いや外国人でもコスプレか映画でしか見たことが無い。


 本物か、いやびっくりだ。童話や映画の世界だけの存在だと思っていた。


 それよりもここはどこなんだ?どう考えても日本じゃないだろう?エリーさんを一人にして考え込んでしまった。


 「タロ?大丈夫?」と顔を近づけながら聞いてきたので、慌てて「大丈夫、大丈夫」と答えた。色々な意味で焦ってしまった。


 エリーは更に「友三さんは私達エルフに、扉を開けてこの地に訪れる者がいたら、助けてあげて欲しい。あくまでお願いじゃから無理なら結構」と言い残して去って行った。


 その後約30年もの間、この扉の前にエルフの者が交代で訪れているという。


 俺は非常に申し訳ない気持ちになった。忠犬ハチ公みたいじゃないか。素直にエリーさんに謝った。


 するとエリーさんは「いいよ30年ぐらい。エルフの寿命に比べれば、大したことは無い」と笑って言った。


 なんとも種族の違いを感じた。というかもうエルフなのね。エルフだろうと人間だろうとどうでもいいけど。


 そんな割り切ったせいか急に腹が減ってきた。お腹もグーグー、グルグルなり始めた。そういえば朝ご飯を食べてからだいぶ時間がたったような気がする。


 そんな俺の気持ちを察したのか、単にお腹が鳴る音がばれたのか、エリーさんはお腹がすいていないかと聞いてきたので、「いいや」と口では言ったが、「グルルル~」と盛大にお腹の音が鳴ってしまった。。


 「この肉を焼いて一緒に食べよう」と、何もない所から生肉を出した。


 「へっ⁉どういう事?」約2kgの肉の塊が、突然エリーさんの横の石の上に現れた。


 俺は突然のことに戸惑っていると、これまた何もない所から、色々な太さの薪を取り出し、それらに向かって「ファイア」と言って火をつけた。


 「へっ⁉どういう事?」同じ反応をしてしまった。もう魔法だよね。間違いないよね。イリュージョンじゃない様ね。デ〇ッド・カッ〇ーフィー〇ドの弟子とかじゃないよね。


 やっぱり異世界なの⁉もう異世界と認めるしかないよね。こんな異空間から物を取り出したり、火を何もない所から放ったらSNSで大騒ぎになるだろう。


 そんな俺の動揺を完全に無視をして、エリーさんは焚き火で火をおこした。そしてある程度の大きさに切った生肉を、細長い棒にさして焚き火の周りの土に突き刺した。


「準備完了と」エリーさんは慣れた手つきで肉を強火の遠火で焼き始めた。非常になれた手つきである。ソロキャンみたい。


 数分すると、表面が炙られてきて脂が滴ってきた。滴った脂が火に流れ落ちバチバチと音と共にとても美味しそうな匂いがあたり一面を覆った。


 やばいもう他の物が見えない。「噛み応えは?味は?など想像しながら焼ける肉を只々見つめていた。


 更に待つこと数分、表面が程よく焦げ、肉汁が滴る肉を俺の目の前に出し、エリーさんが「どうぞ」と俺にくれた。


 何の肉か分からなかったが、あまりのいい匂いと信じられないぐらいの肉汁の滴りに、気がついたら目の前の肉をかぶりついていた。


 「美味しい~~~~!」


 信じられない美味しさだ。今まで食べた肉が何だったんだろうと、感じるぐらい衝撃的な美味しさだった。


 本当に美味しものを食べた時って、美味しいとしか言えないし無駄な言葉はいらない。言葉を発するぐらいなら、次の一口が欲しくなる、そう思った。


 これは何の肉だ?牛、豚、猪?分からん。スーパーの息子に育った手前、色々な肉を食べる機会には恵まれていたような気がするが...。


 考えても想像がつかないのでエリーさんに聞いてみた「エリーさん、これは何の肉なの?」


 「んーオオク肉だよ。太郎は食べたことが無いの?」


 「いやないよ」と真顔で答えてしまった。


 初めてエルフと会い、初めてオーク肉を食べるなど、初めてがやたらと続いた一日であった。


 そしてこれが俺とサーマレットの住人達との、出会いだった。

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