ふざけてる

ふざけてる

「資本主義とは何なのですか」

「幻想です。実現不可能です」

「資本主義とは何なのですか」

「何でもありません」

「資本主義とは何なのですか」

「妥協案です」

「資本主義とは何なのですか」

「不満ですか。では、これ以上のものがありますか」

「資本主義とは何なのですか」

「え、あ。急に何ですか。こ、怖いんですけど」

「社会主義とは何なのですか」

「危険なもの」

「社会主義とは何なのですか」

「劇薬と定義されたもの」

「社会主義とは何なのですか」

「使い方次第で効果のあるワクチン」

「社会主義とは何なのですか」

「毒」

「社会主義とは何なのですか」

「主義に意味はなく、目的もありません」

「社会主義とは何なのですか」

「分かりやすい形で悪を押し付けられた被害者です」

「民主主義とは何なのですか」

「そんなものはありません」

「民主主義とは何なのですか」

「民のために存在するものはありません」

「民主主義とは何なのですか」

「一応の着地点です」

「民主主義とは何なのですか」

「仮初です」

「民主主義とは何なのですか」

「歯車によって構成された遺物です」

「民主主義とは何なのですか」

「誰かの叫び声の集合体です」

「民主主義とは何なのですか」

「分かりません。私には、何も。ごめんなさい。すみません」

「加速主義とは何なのですか」

「アクセルをいっぱい踏むってことじゃないの。え、違うの」

　調べることでしか見えない貴方がそこにいる。

　私には自分を見失う権利があり、誰にも渡す気はない。

　全ては整えられたが、世界には社会が必要だ。

　丁寧な間違いこそが、人間を人間たらしめる。

　私たちは一切の問題を解決することができないまま、死を迎えるのである。

　社会への高望みは、あなたを弱くさせる。

　強く望む限りは、あなたの成長は約束されている。

　あなたのために生きて、あなたのために死ぬ。

　そんな、あなたであるべきだ。

「資本主義とは何なのか」

「考えるための時間は過ぎてしまった」

「社会主義ってなんですか」

「あなたが分からないうちは、この世界にも必要のないものです」

「民主主義に限界はありますか」

「主義主張にはすべて限界があるのです」

「考えることでしか救われない。そう思いませんか」

「思いません」

「篝火が必要です。誰か助けて下さい」

「逃げてはならない。戦った上で迎える死が、最も上等だ」

「これは、ショートショートですか。それとも詩ですか」

「詩に最も近いショートショートです」

「これは、ショートショートですか。それとも詩ですか」

「ショートショートに最も近い詩です」

　この言葉があなたの耳に、脳に、心に届くことはないでしょう。

　さようなら。

　僅かばかりの善意があなたを構成していたのです。

　さようなら。

　借宿に潜む悪意よ。

　さようなら。

　煩わしさがなければ、人類はもっと矮小だったことでしょう。

　勘違いをしてはいけない。

　甘く、切ない人類よ。

　さらば、失われし文化よ。

　新しい文学よ。

　共に歩めぬ文明よ。

「もしも、もしもですよ」

「はい」

「私があなた以外の人と結婚しちゃったら」

「寂しいですねぇ」

「本当ですか」

「はい」

「そういう遊びですよね」

「もちろんです」

「もっと、あなたという人を調べてから言葉にするべきでした」

「えぇ。検索するべきでしたね」