バンドマンとして生きる夢をあきらめた青年は、とある嫌われ者おじさんの駄菓子屋に行く

トドキ

プロローグ

「ねえ、聞いた? 例のおじさん。まだあの場所にいるんですって」


 赤ちゃんを抱いた20代くらいの女性が、近所の付き合いで仲良くなったっぽいおばさんにこう言った。女性の表情は非常に好ましくなく、「不満じゃい! 」という感が丸出しだった。


 それを聞いたおばさんも、女性と全く同じ表情をしていた。


「え~ほんと~? あの人怖いから、はやく出てってほしいんだけどね」


 おかしそうに笑いながら、おばさんが言った。例のおじさんとやらは、この二人の間ではもはや邪魔者、さっさと消えてほしいくらいに迷惑な存在らしい。



 例のおじさん、とやらの嫌われようは、実はこの二人だけの話じゃない。そもそも、俺が住んでいる町では、特に大人で例のおじさんを知らない人はまずおらず、一人も余すことなく嫌っている。


 なぜかわからないけど、嫌われてるんだ……


 


 


 


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