第4話 でしゃばり王子
今日は学校の日。
かなり退屈だけど、学生だし一応行かなければ行けない。
住んでいるお城からは徒歩で10分程かかる。
最初は車で登校していたが、注目を浴びて登校どころではなくなるため歩きにした。
町にはたくさんのお店がある。
ご飯屋さんや雑貨屋さん、服屋さんもあっていつも賑わっている。
今は朝だからまだ店は開いていないけど。
「よーっす!!レイ元気してる?」
「まぁまぁ元気だよ」
声をかけてきたのはクルス。僕の昔からの幼馴染で親友だ。
僕の王国に住んでいて歳は一緒。
町で1番人気の洋食レストランの息子で料理の腕前はプロ級。
僕が家にあまり帰れなかった時はたくさん料理を振る舞ってくれてとても助かった。
「なんかいつも元気なさそうに見えるけど、元気なんだもんな」
ニヤニヤしながら見てくる。
「元気がないと生きれないからね」
「ボケのつもりだったんだけど!?」
「え、そうなの?」
今のってボケなの?
だとしても、実際僕元気そんなあるわけでもないし本当のことだな。
「そんなマジ顔で言わないでくれよ!!」
クルスはすごく慌てた顔をしている。
「クルスのボケはあんまりよくわかんないや」
昔からそう。
本当によくわからないノリやボケをする。
でも、小学校時代ずっと1人でいた僕に絡んでくれた。
よく意味わかんないことばっか言ってノリもよくわからないけど大切な親友だ。
「レイは昔からいつもそうだよな。顔に覇気ないし、暗いし、顔かっこ悪いし、掴みどころないし、話しずらいし、ノリわかんないし、元気ないし」
「それ、ほぼ悪口じゃん」
元気がないなんてとくに。
「やっとちょっとテンション上がったな!」
口に手を近づけながらニヤニヤしている。
「疲れるからあんま上げたくない」
「けど、上がってるぞ」
「なら、もう仕方ないね」
それを考えるのもめんどくさい。
「まぁ、元気ありそうで良かったよ。そういえば最近彼女とはどうよ?」
元気ボケ気に入っているのかな。それとも優しさなのかな。
ツッコまないけど。
「うーん。まぁまぁいい感じ。許嫁になったし」
クルスはニーナとよくいることを知ってるため、僕とニーナが付き合ってると思っている。
本当の関係は伝えていなかったため許嫁だったことを知りかなり驚いている。
「い、許嫁!?」
クルスが大きい声を出したため、店を開ける前の人達からすごく見られている。
「すいません。てか、お前それ本当なのかよ!?」
「あ、これ言っちゃダメなんだっけ」
なんか世間に好評するなって言われてた気がする。
「レイ様それって本当ですか!!」
「いつ結婚するんですか!!」
「お相手はニーナ王女ですよね!!」
珍しくたくさん声をかけられる。
近くに寄って物凄く声をかけられたからかなり疲れた。
こんなところで時間とられたくないのに。
「すいません、俺とコイツ急いでいるんで!!」
クルスがそう言って僕の手を引っ張り走り出した。
話もよくわかんないけどこうやって僕のことを考えてくれてるのが、長い間一緒にいる理由だ。
「お前本当突然あんなこと言うなよな」
「ごめん」
あの後、僕とクルスは町の人達から逃げるように学校まで走った。
「王子様ならもっと立場を考えないと、みんなお前に期待してるんだから」
「でも、弟と兄貴もいるし・・・」
「ケイトさんは別の国の王女様と結婚するんだろ?それに弟は歳が大部離れてる。だから、お前しかいないんだよ!!」
学校に入る校門前で言われる。
「うん、頑張るよ」
ニーナ以外にもクルスには城の中で弱い人物を演じていることを隠している。
だから、少し言葉に罪悪感を感じた。
「そう来なくっちゃ!」
ハイタッチするように手を上にあげる
「昼寝はするけど」
「昼寝はするんかい!!いや、別にしていいんだけどさ」
1人でツッコミをして1人で解決する。クルス変な奴。
「おい、お前今バカにしただろ?」
僕の顔を覗き込んでくる。
「してないよ?」
「お前と何年一緒にいると思ってるんだよ。お前が誰かをバカにする時は右の口角が僅かに上がる。俺はそれを見逃さないぞ!」
そんな特徴あったんだ。
「それよりもクルス。早くしないと学校に遅れちゃうよ?」
「やば!!急がないと」
少し走りだすクルス。
「僕は昼寝に行ってくるね」
クルスの方に手を向けて軽く振る。
「お前も一緒に行くんだよ!!」
首根っこ掴まれて連れていかれる。
「寝てていい?」
「好きにしろ!!」
少し力を抜いて睡眠モードに入ろうとした。そうしたら急に首根っこから手が離された。
「痛っ・・・!」
クルスがおでこを抑える。
なにかにぶつかったらしい。
「朝からいいご身分だな、レイ坊っちゃんよう」
「ナルカ」
物かと思っていたら人だった。
ナルカは僕の王国の左側にあるテスレフトホール王国の第一王子。
「お前に用はねぇよクルス、そっちのアホ面に用があんだ」
僕の方を見て言ってくる。
「あ?レイはお前なんかに興味ねぇよ」
ナルカと僕の間に入ってくれるクルス。
「ほぅ。俺とやる気か?」
指をならしながら殺気のこもった目で挑発してくる。
「上等だよ」
強い目で睨み返すクルス。
でも、あくまでこいつの狙いは僕だ。
だから迷惑はかけれない。
めんどくさいけど、少しばかりナルカを相手にしてやることにした。
「垂れ目で透かした茶色の、剃り残しの髭あって、眉毛の整え方ダサイ、肌ツヤない、制服最高に似合ってない、張り切りすぎのナルカ君。なんか用?」
クルスが臨戦体制を整えた後、僕はクルスの前に入り"でしゃばり王子"に言葉を発した。
「いいなーその目。透き通った青色で俺を殺したい思いが隠れてない眼光」
鋭い眼差しで睨んでくる。
こいつとは去年、高校一年生の頃に因縁がある。
「隠す必要ないでしょ。だって本当だもん」
また一段怒りのボルテージが上がる。
「いいねぇ。殺りあうか」
笑いながら、更に指を鳴らすナルカ。
僕も殺り合う準備をする。
「そこまで!!」
声を発した方を見てみると、そこには大切な女の子ニーナがいた。
「喧嘩はダメですよ!!」
彼女が言い終わる前、左頬に強烈な衝撃をくらった。
「ちょっと!?何やってるんですか!!」
慌ててこちらに来る。
「おい、貧弱だな。セントリアンの王子はよ!!」
また一発僕を殴ろうとしたが、それは出来なかった。ニーナが前に入ったからだ。
「もういいですよね。はやくどこかに行ってください」
いつもとは違う冷たい声で言う。
「おいおい、"未来の旦那様"に向かってそれはないだろ?」
「誰が未来の旦那様なのかしら?」
「その照れ隠しも可愛いいぜ」
ニーナの頬に手を触れようとした。僕は急いでその手首を掴んだ。
「どっか行きなよ、でしゃばり王子」
本気で殺す目をしてナルカを睨む。
「王子様面しない方がいいぜ、三下くん」
僕に掴まれていた手を振り解き、校舎へと向かうナルカ。周りの人も注目していたが、気にもせず校舎の中に入った。
「ニーナおはよ」
「おはよじゃないですよ!ちょっと来てください」
殴られた方のほっぺをつねりながら引っ張られる。
「ニーナ・・・そっちの頬さっき殴られて怪我してるんだけど」
血も出てて、ちゃんと痛い。
父さんに殴られた傷は僕自身の回復力も早いからもう引いてるけど、今受けたばっかの傷は別。
「"自然の王子様"でしょ?弱音吐かないでください」
「はい」
怒ってる彼女には誰も逆らえない。
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