第13話 襲撃2

前書き


前回のあらすじ


ヒロインが暴れる



本文



 軍用ドローンが出現したのはとても嬉しいのだが、無線通信の使い方が分からない。説明書がないと使えねーじゃん!操作をミスるに決まっている。テンションだだ下がり。


 「ど、どうしたのですか?」


 俺の様子が変わって気を使って背中を撫でてくれるエレノアさん。なんて情けない...ドローンを消し、別のものを召喚する。


 「召喚サモン、昆虫型ドローン...出たよ。はぁ。まぁ、これはこれで敵に見つからず偵察が出来そうだな。」


 昆虫型ドローンを窓から解き放ち操作する。無線通信も比較的簡単で素人の俺でも使える。小型ではあるが昆虫型ドローンから映し出される映像をエレノアさんに見せる。


 「す、すごい...あんな小さい虫がこんなに綺麗で繊細な絵を映し出すなんて。あ、あれ?動いています、エルさん?これは?」


 「レンズ...説明が難しい。簡単に言うとあの小さな無機物な虫が見たものを共有出来るってこと。えーと、右に進んで、左に曲がるー。この道は知っている。確か前に通った気がする。あっ!いい方法を思いついた。エレノアさん、このコントローラーで操作してて。」


 「えっ!え、え?無理、無理ですよ!」


 「なんとかなる!頑張れ!」


 今まで機械を触ったことがないのだろう。モニターに映し出されている映像が酷い。壁に激突したり、獣人のレジスタンスに突っ込み、握りつぶされたり踏まれたりなど数体の昆虫型ドローンが消滅する。


 「召喚サモン、小型無線機。あー、あー。声がしっかり通る。よし、これをドローンに括りつけて...えーと、テープがねぇ、チッ。紐で縛るしかないな。うしっ!完成!エレノアさーん、操縦慣れたかな?」


 「あ、はい。次はそのドローンを飛ばすのですか?」


 「おう。実験だ。ドローンに括りつけているスピーカーでスキルを使ってみる。もし成功したらノーリスクで遠隔攻撃が可能となる!くっ、くくはははは。それでは始めるぞ。」


 何度も失敗して腕が上がったエレノアさんの操縦で抗争している騎士と獣人のレジスタンスを発見する。そして無線機で声を流す。


 「召喚サモン雷撃ライトニング。」


 モニターを見るとドローンから電撃が放たれるのが映し出される。


 「なんてこった...完璧ではないか!あまり遠くまで飛べないのが難点だけど。召喚サモン溶岩マグマ。」


 「おおーっ!全て溶岩で溶けて跡形も無くなっています!さすが、エルさん!」


 これ、ダメだろ。威力があり過ぎてつまらない。例外を除いて使用禁止。それでも安全で確実な手段としてスピーカー付きドローンを有効活用してやる。昆虫型ドローンは狭いところをくぐり抜けることも出来る。


 「エルさん、他の場所を襲撃しないのですか?」


 ドローンを操縦して偵察しているエレノアさん。しかも、コントローラーを2つ同時に操作している。腕上がりすぎやろ。


 「うーん。ドローンで爆撃をする予定だったんだけど、やっぱり撹乱させるだけに留めるか。プチッと潰しちまうと恐怖をばら撒けない。」


 「圧倒的な力を知り恐怖するのでは?」


 「世の中にはいるんだよ。圧倒的な力という恐怖を乗り越え希望を持ち、立ち上がる奴が...そういう奴をなんて言うか知っているか?」


 頭を横に振り知らないと返事をするエレノアさん。


 「勇者」


 喉を鳴らし俺を見つめるエレノアさん。


 「そんな奴が現れるはずがないと思うか?確率はゼロに等しい。だがゼロではない。そして、勇者は希望という夢を民衆に見せる。」


 「エルさん...分かりました。襲撃はここまでにしましょう。ただ、火種をばら撒くことは許可して頂けますか?」


 「もちろん。騎士とレジスタンスの抗争を激化させて構わない。騎士の数を減ればそれだけ俺たちも動きやすくなるしな。」


 「レジスタンスを駒に...キングである首謀者と考えられるガドル王国まで道を作ってもらうと。鬼畜、悪魔、狂ってますね。ふふふふふっ。」


 「だからそれ貶してるの?褒めているの?」


 「ふふっ。褒めていますよ。正気ではとても出来ないことを平然と何食わぬ顔で殺る人を私は崇拝しております。」


 手を組み膝を床に付け目を閉じ顔を伏せるエレノアさん。


 「顔を上げてくれ。俺を信じ、俺の手をとって前に進む君を支えることを再度誓うよ。必ず復讐を完遂させよう。」



後書き


次回 ばら撒き

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