第8話 レジスタンス

前書き


前回のあらすじ


エルフを怒らせる主人公



本文



 (さて、どうしたもんのか...)


 激おこのエルフ、俺が復讐する相手ではない。これは、エレノアさんの戦いである。


 「あー、君は、俺が謝れば済むのか?」


 「もう、許さない。私はお前を成敗する!」


 「そうか...ここでは、観客が多い。着いてこい。」


 激おこエルフを挑発した上で指図する俺。俺がやられたら間違いなくキレるな。あはは。

 俺は、エルフに背を向けエレノアさんがいると思われる場所へ走る。召喚した疾風の靴を履いているため、日本にいる頃よりも速く走れる。


 「まてぇええっ!」


 (さすがに街の中で魔法を放つことはしないか。)


 友好の指輪は、俺とエレノアさんにしか見えない魔力の線で繋がっている。まだ距離がある。


 「風の刃ウィンドカッター!」


 路地に入った瞬間、魔法ぶっぱなしてきた。俺は背後にいるエルフの方へ向き、何処かにある土壁を召喚する。


 「なっ!?無詠唱魔法だとっ...」


 風の刃ウィンドカッターで土壁が破壊されるが時間は稼いだ。俺は、再びエルフに背を向け走り出す。その際、手榴弾をばら撒く。


 「アハハハハハッ!この程度で死ぬなよぉ!レジスタンスのエルフさん!!」


 「くっ!なぜそれを知っている!?」


 「何驚いているんだ?レジスタンスのことを知っている俺を殺すのか?」


 「その口を閉じろおおっ!」


 (早く、早く助けに来てエレノアさーーーん!)


 速く走れるといっても体力は日本にいた頃とあまり変わらない。レベルアップという概念があるのであれば、モンスターでレベルアップしているはず。だが、体力は変わっていない。つまりレベルアップの概念はない。キツい、早く。


 「タスケテクダサーーイ!騎士さまーーーっ!エルフに襲われていまーーーす!」


 「き、き、き、き、キサマーーァッ!どこまで俺をコケにするんだ」


 (エレノアさんの方に誘導しているんだが、一向に会わねー...。なんか面倒になってきたな。やめだ、やめ。)


 俺は、立ち止まり何度目か分からないがエルフの男に向き合う。俺がエレノアさんの方に行くのではなく来てもらおうか。


 「やっと止まったか...覚悟が出来たのだな?」


 「覚悟?そうだな、お前をぶっ飛ばす覚悟が出来たよ。先手必勝!召喚サモン、アサルトライフル!ヒャッハーーーッ!」


 連射される弾丸がエルフの身体を何発も貫通していく。これだけの銃声が鳴れば異変を察知してエレノアさんが来てくれるはず...っと思った矢先、後方で爆発が起き煙が立っている。


 「この爆発は、手榴弾か?ってことは...もう1人のエルフと戦闘が起きたのかも。ここに人が来るかもしれないし、宿に戻るか。」


 爆発音と共に雄叫びが聞こえる。恐らくレジスタンスのアジトの襲撃が出来たと思われる。そうなると、レジスタンスと騎士団との交戦も始まるはず。


 (お腹がすいたらエレノアさんも帰ってくるだろ。うーん、やっぱり様子見に行くか?)


 「エルさん!」


 「おっ!どうだ...った!?」


 「いたぞっ!!全員でかかれー!」


 「ぇぇええ!?なんでレジスタンスがこんなに?」


 「しくじりました…てへっ。」


 クソったれ!こんな時にてへっとか可愛くないんだよ!また持久走かよ、勘弁してくれ。

 俺とエレノアさんは街の中をひたすら駆け抜ける。市街にもかかわらず魔法が飛ぶわ飛ぶ。死傷者も多く出たのでは?と思うほど多くの魔法が飛び交う。うん?俺たち?ダメージを肩代わりしてくれる宝具のお陰で無傷である。

 身代わりの宝具(指輪型)、膨大な魔力を事前に注ぎ込むことによって使用者の意思とは関係なく身体に大きなダメージを受けると思われる攻撃を弾いてくれる。この身代わりの宝具、事前準備の段階で俺とエレノアさんで各10個用意してある。魔力チャージは召喚によっていくらでも可能。無敵の宝具なのだ!


 「はぁ、はぁ、はぁ。エレノアさん、身代わりの宝具、あといくつ残っている?」


 「はぁ、はぁ。あと3つ程ですね...これが無ければ、とっくに死んでましたね。」


 「はぁ、はぁー。もう追っては来ないか?ふぅー。どうやら巻いたようだね。近くの宿に避難しよう。もうクタクタ。」


 エレノアさんも同意見なのか軽く頷き宿屋までの案内をしてくれる。宿屋に着いてすぐフード付きのローブを脱ぎベッドに倒れ込む。


 「たはーっ。絶対明日筋肉痛だわ、これ。身体が癒えるまで大人しくしておこう。」


 「そうですね。さすがにもう走れませんし。私がミスしたばっかりに...本当に申し訳ありません。」


 ベッドの上で土下座するエレノアさんを見て、慌てて顔を上げるよう伝える。確かに、宝具がなければ死んでいたかもしれないけど、こうやって五体満足で生きているわけだし問題ない。その事を伝えると安堵した表情で横になるエレノアさん。

 宿の受付には3泊分のお金を支払っているからのんびり出来る。


 「適当に飯を置いておくから食べて。あと、明日でいいからレジスタンスのこと教えて。」


 「分かりました。そして、ありがとうございます。」


 俺は、ベッドの近くにあるサイドテーブルに召喚した飯と水を置き力尽きたかのように眠りにつく。


 (もう、動きたくない。おやすみ...)



後書き


次回 準備


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る