第5話 戦力アップ

前書き


前回のあらすじ


ハーフエルフと話す主人公



本文



 初めての乗り物で困惑しながら密着するエレノアさん。


 (慎ましい胸だ...はぁ、初めての2人乗りがハーフエルフとは。人生何が起きるか分からんな。おっ!)


 「塗装された街までの道が見えてきたな。そろそろ降りて歩くとするか。」


 スクーターを停めて、俺たちは降り、装備を整える。6時間ぶっ通しで移動したからお尻が痛い。もっとも馬車よりマシだと思うが...

 エレノアさんに、魔道具マジックアイテムをいくつか渡す。疲労回復の指輪に変装のネックレスなどあったらいいなーって思って召喚を試してみたら出現した。


 「あ、あの、エルさんは何者ですか?」


 「またその質問か?俺は平凡な人間だ。ちょっとスキルが良いだけで...魔道具マジックアイテムを超える力を宝具と言う。この万力の指輪は、凄いな。振れなかった宝剣が軽く振れる。」


 念の為に、エレノアさんにも同じ指輪に短剣を渡してある。装飾が貧相ではあるが宝剣の1つらしいけど。


 「エルさんが平凡な人間だとしたら、世の人間はゴミになってしまいますよ。ふふっ。」


 「そ、そうかなぁ...まぁ、死にたくないからね。装備に妥協はしたくない。それにしても変装のネックレスは髪色だけでなく耳までも変わるんだな。魔法は、なんでもありだな。」


 「エルさんのスキルの方がなんでもありな気がします。それでここから歩くのですよね?」


 俺は頷き、カロリーメイトと水をエレノアさんに渡し食べながら歩く。日が暗くなるまでには街に着きたい。それと、俺とエレノアさんの戦闘技術を少しでも高めておきたい。目の前にいるゴブリン(エレノアさん曰く)で腕試しだ。


 「それじゃあ...」


 エレノアさんの方を見ようと顔を向けるがそこに彼女はおらず、悲鳴が聞こえ、すかさずそちらの方へ顔を向ける。


 「くふっ。ふふっ。まず1匹。そして...2匹目。」


 速い。動きが早すぎて目で追えなかった。もしかしてエレノアさんは強い?センスの塊なのか?


 「お、お疲れ様です。ゴブリンの首を的確に狙って切り裂き確実に殺すとか...エレノアさん、武器をもって戦うの初めてなのでは?」


 目が据わって口元が上がったエレノアさんが戻ってくる。俺は少し恐怖を感じ、身体が固まる。


 「ふふっ。タガが外れたかのように力がみなぎります。私のスキルなのでしょうか?」


 「俺に聞かれても分からない。えーと、隠密の宝具を着用したら暗殺が出来るンじゃないな?召喚サモン、隠蔽の宝具」


 想像力が足りなかったのか、それとも存在しないのか出現しなかった。そんなに世の中甘くないか。

 しかし、結果論になるが、これは強力な宝具や魔法具マジックアイテムより有難い誤算だ。エレノアさんが味方で良かったの心の底から思う。


 「隠蔽の宝具、出現しなかったですね...無いものねだりしても仕方ありません。むしろここまでの装備があれば負ける気がしません。片っ端からモンスターを屠っていきましょう。」


 「お、おう。例の武器も使えるよう試しておいて。」


 「はい、もちろんです。楽しみですね。」


 会った当初より笑顔が増えたが、戦闘の中、笑みが深まるとか闇が深すぎだろ。


 (おっ?あれは、俺の宿敵のウルフ!)


 アサルトライフルをマジックバッグから取り出し、標準を合わせ発砲する。


 「アハっ!アハハハハハっ!死ねぇ!畜生どもぉぉお!次ぃ!次ぃ!おら、オラァ!」


 ウルフ数十匹を壊滅。弾の補充を心配することなく、アサルトライフルを何度も新しいものに替えていく。俺の後方で爆音が鳴る。恐らく、エレノアさんが手榴弾を起爆させたのであろう。あちらも上手くいっているみたいだな。


 (アサルトライフルだと音がうるさい。サイレンサーが装着出来るピストルに変えるべきだな。表向きは、何しようか?うーん...)


 「エルさーん!こっちは皆殺しにしましたよー!」


 手を振って笑顔なエレノアさん。俺が生きてきた31年間、可憐で苛烈な女性。正直、ちびるくらい怖いっす。


 「お、おかえり。手榴弾は...まだある?」


 「はい!1回使いましたが、素晴らしい威力でした。モンスターがバラバラになりましたよ...ふふっ。それ以外は、私の手で葬りましたけど。くふふふふふっ。」


 俺は思わず手を叩き絶賛する。


 「す、素晴らしい活躍だね。でも、油断は大敵。疲れたらポーション、傷付いたらポーションだからね。あと、勝てないと思ったらすかさず逃げること。友好の指輪がある限り探し出せるから。」


 「もちろんです。ふふっ。」


 左手の薬指に嵌めている指輪を撫でているエレノアさんは、傍から見たら危険人物。笑顔が怖い。人選を誤ったかもしれないと少し後悔している。


 「戦闘経験は、嫌という程これから積むだろう。この辺りはモンスターは居ないし街に行くか。」


 「はい!」



後書き


次回 街へ

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