悪役令嬢に転生したけど、モブキャラに恋をしたらいけませんか？

第26話 冷静になって考えてみたら……

　レイモンド兄様が持って来た料理を平らげると、サラが泣いて喜んでいたのを見て、こんなんじゃいけない！と自分に喝を入れた。

「サラ、明日から学校に通うわ」

そう言って部屋に戻ると、ベッドの縁に腰掛けてから身体をベッドに預けた。

目を閉じて、あの日の二人を思い出すとまだ胸が痛む。

一つ大きな溜め息を吐いてから、ふとヒロインと出会ったのを思い出す。

そして私は、大事な事を思い出した。

アティカスルートの始まりは、魔法学園の入学式で他の貴族令嬢にいじめられて裏庭に隠れていたヒロインと、入学式の挨拶をするアティカス王子にうるさくまとわりつくフレイアを巻く為に逃げて来た裏庭で、アティカスとヒロインは偶然に出会うのだ。

私は飛び起きると

「私、もしかしたら、アティカスルートの出会いイベントを台無しにしちゃったの！」

そう叫んで真っ青になる。

しかも、だ。

レイモンドルートでは、悪役令嬢のフレイアが裏庭でヒロインをいじめている現場に居合わせ、フレイアからヒロインを救い出し入学式の会場まで案内するという出会いになっているのだ。

「もしかしたら、レイモンド兄様ルートになっちゃう？」

頭を抱えて叫び、レイモンドルートをおさらいしてみた。

裏庭で出会ったヒロインの可憐な美貌と、ヒロインをいじめていたフレイアに嫌悪感を抱くレイモンドに、優しく「フレイア様を悪く言わないであげて下さい」と、どんなに意地悪されてもフレイアを庇う優しいヒロインに恋をするのよ！

待って！レイモンドルートだと、私、処刑ルートしか無いんだけど！！

しかも、ヒロインがアティカスルートに行ってくれないと、私、アティカス王子と結婚しなくちゃいけなくなるじゃない！

ガックリと膝から崩れ落ち

「失恋で落ち込んでいるうちに、私、処刑されちゃう……」

ポツリと呟くと、急いでノートとペンを取り出した。

攻略対象は6人。

アティカス王子とレイモンド兄様。

そして4家紋の他の3家紋の跡継ぎ達も攻略対象なのだ。

先ずはミューレンバーグ家の長男であるカイル・ミューレンバーグ。赤い髪の毛と赤い瞳をした、守護精霊は火炎の精霊で、得意魔法は勿論火炎魔法。成績優秀なんだけど、少しナルシスト気味で残念なイケメンさん。ちなみに、ゲームでの声は小野崎大輔。小野崎Dは、残念なイケメンをやらせたらピカイチよね！

次はルイス様のお兄様であり、大地の精霊が守護精霊のフェリックス・セヴァランス。焦げ茶色の髪の毛に、黄金の瞳をしていて、剣の腕がずば抜けているらしく、今は騎士団に所属している。

攻略対象の中で唯一、20歳という年長者。性格は、俺様タイプ。ゲームでの声は三河伸一郎さん。

4家紋最後の一人は、水の精霊が守護精霊の青い髪の毛にスカイブルーの瞳。

生徒会の会計をしており、頭脳明晰で切れ者と呼ばれるジャックス・ワーロック。

性格はドSで、ゲームでの声は木村洋平さん。

この5人が最初は攻略対象として現れるんだけど、全部を攻略した後に隠れ攻略対象として現れるのが、アティカス王子の弟のゼドだ。

アティカス王子の一つ年下で、病弱でひ弱キャラだが、実は中々のひねくれ者。

チートキャラのアティカス王子に嫉妬して、黒魔法に手を染めてしまうのよね。

そんなゼドを、ヒロインがマザーテレサ並の深い愛情と優しさで包み込み、魔王復活の依り代にされそうになったゼドを救い出すのよね。

そう言えば……妃教育で王宮に行っても、ゼドには会った事が無かったわね……。

ゼドは確か……薄いブロンドの髪の毛に紺色の瞳だった筈。そしてお声は下田紘幸さん。可愛い声で辛辣な事を言うけど、実はツンデレ。デレた時がめちゃくちゃ可愛いのなんのって！！

取り敢えず、悪役令嬢フレイアはアティカスルートとレイモンドルートしか出て来ない。この2人さえ回避すれば、処刑される事は無くなる。