第14話 ルイス様への想い

それでも、8歳のルイス様。

9歳のルイス様、10歳のルイス様……と、成長を遠くから見られるだけで良かった。

魔法学園に入学さえしてしまえば、普通にお会い出来るから。

なんせ、ゲームの中だった推しが、生きて同じ世界に居ると思えばなんのその!

そして12歳のルイス様で、初めて眼鏡姿を目にした時は、それはもう!窓を割る勢いで張り付いたわ!

(あぁ!近くでショタ眼鏡を堪能したい!!)と思ったけれど、それでも遠くからお姿を見られるだけでも今は良いと眺めていた。

幼い男の子から少年へと成長する姿は、ファンとしては胸アツだった。

モブが故に、公式では魔法学園の先輩の全貌がまったく明らかにされていない。

だから、魔法学園の先輩の初恋の相手がフレイアだったなんてオイシイ情報さえ無かった。

そして何より、魔法学園の先輩が眼鏡姿になるのも、12歳からだなんて知らなかった。

そういう意味では、フレイアに転生して良かったのかもしれない。

そう思った時、ふとゲームの内容を思い出す。ゲーム内で魔法学園の先輩が死んだり怪我をするのは、必ず悪役令嬢のフレイアがヒロインに危害を加えた時だけだったという事を。

.......という事は、フレイアがヒロインと仲良くなれば、魔法学園の先輩が死ぬ事も怪我をする事も無いって事よね!

窓からルイス様を眺めながらそう思っていると、ふと見上げたルイス様と視線が合った。思わず窓にへばり着くと、ルイス様がフッ.......と小さく笑ったような気がした。

「キャー!!ルイス様~(小声)」

まるでアイドルと目が合ったと思い込んで喜ぶジャ○オタかのように、私はその場で狂喜乱舞した。

 例え誰にも理解されない想いだとしても、私はこの想いを大切にしたいと思った。目が合っただけで、こんなにも心が踊る人に出会った事など無かった。

そう。前世から、モブにしかときめかない私が、モブでもモブ界のKing。チュートリアルに出現するルイス様と出会い、私の世界は変わった。

それまでは、変わらない社畜な毎日。

仕事して、昼休みや自宅に帰宅した少しの時間に乙女ゲームをするだけの日々。

三次元の男性には、小、中学校と男子に虐められた記憶が甦り、興味を持てなかった。そんな私に差した、一筋の光。

それが魔法学園の先輩こと、ルイス様だった。魔法学園の先輩に心を奪われ、私は直ぐに説明書の魔法学園の先輩の画像を何枚もカラーコピーした。

画面の写メなんて、何枚撮ったか分からない程に熱中した。

例えお声が『ポポポポ』という機械音であろうと、私にはルイス様が全てだった。

周りから『モブ先輩』と呼ばれようが、『メガネモブ』と言われようが、私にとって魔法学園の先輩ことルイス様は、たった一人、振り向いて欲しい存在なのだ。

「後6年……、6年の我慢ですわ」

自分に言い聞かせるように呟き、馬車に乗って去って行くルイス様を見送った。

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