練習2
Ayane
第1話
「まさか、入った途端離れ離れになるとは…。」
渋る相手を何とか拝み倒してようやく同行OKをもらい、準備万端整えていざ行かんと結界内に足を踏み入れた瞬間、見知らぬ土地にポツン。
先刻まで隣にいた相方は影も形もなく、思わず「……は?」と声が漏れたのも仕方がないことだろう。
連絡を取ろうにも入れても出られない結界内ではケータイは不通。何とか無事でいてくれることを祈りつつ、次から次へと沸いてくる雑魚共を片付けながら結界が解ける夜明けの時刻を待った。
爽やかな朝日に照らされて、自分が海を渡った南の土地にいることを知った。
ただ、新幹線で渡れる場所なので、更に南の船か飛行機しか渡航手段のない場所よりはまだマシだと思うことにする。
相方の無事も確認できて安心して帰路に就くことができた。
途中で何度かやり取りをして、到着時刻が大して変わらないことが分かったので、駅中の大型書店で落ち合うことにした。
ゆっくりお茶でもとも思ったが、夜通しの臨戦態勢で心身ともにヘトヘトで早く帰って休みたい。相方も似たような状況のようで、取り敢えずお互い無事な姿を確認だけして解散することにした。
先に着いたのは自分の方で、何となく書架の間をブラブラしながら相方の到着を待っていた。
ふと目に着いたのは旅行雑誌。温泉!グルメ!観光!の文字に、そういえば自分が飛ばされた街も観光に力を入れていたんだっけ。
何となく手に取りパラパラとページを捲りながら、もしかして近くに温泉とかあったのかな。実際これが仕事なら、仕事終わりに温泉に浸かって美味しいもの食べて観光もしてってかなり贅沢なプランが組めそうだ。こんな贅沢プランなら相方も前向きに検討してくれるかも。
などと空想の世界で遊んでいるとふいに声を掛けられた。
「キミは見つけやすくて助かるわ。」
成人男性の平均身長をかなり超過しているため、自分が探さずとも相手が見つけてくれるのはメリットの一つ。まあ、見つからないようにしても見つかってしまうのでデメリットでもあるのだけど。
見ると昨晩忽然と姿を消した時と同じいで立ちにコンビニの袋をぶら下げた相方が笑って立っていた。見たところケガらしいケガもしていなくて安心した。疲労がにじんでいるのはお互い様か。
相方は自称フツーの会社員である。なぜ自称かというと、フツーの基準が一般的な基準ではなく本人基準だから。一般的な基準に照らすと…こんな人がそこら辺にゴロゴロいたら大変だ。なので今回の仕事に力を貸してもらおうと話を持ち掛けた。
本来なら近くの結界内に現れるターゲットを二人で叩いて終了。そんなに難しい仕事ではないし、翌日に影響なければいいと了承してもらったのに、想定外の弾丸旅行に、自分はともかく相方を危険な目に合わせた上に仕事まで休ませてしまった。
なんと詫びようかと疲れた頭でグルグル考えていると、
「無事も確認できたしそろそろ帰ろっか!ひっさしぶりに新幹線乗ったわ~ほぼ寝てたけど。しかも向こうでイケメンなお兄さんと知り合っちゃったし」
んん?ちょっと聞き捨てならな…「ほら行くよ~」と笑いながら歩きだす相方に続いて慌てて書店を後にした。
練習2 Ayane @tenn1027
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