お会いする.下

 立ち並ぶ十二神将像にまぎれて、あの有名な運慶作の帝釈天の姿がある。聖観音、梵天もまばらに設置されていた。


 ——そういう安置の仕方なのか。三尊立像っていうから、てっきり三尊セットで祀られているのかと思ったよ。


 現実ゆめでは、そうではないらしい。


 そんな須弥壇エリアの一角に、見覚えのあるお像がポツンと置かれていた。サイトで調べた本命、刀八毘沙門天だ。写真通りのお姿である。


 ——そうそう、これこれ。これが見たかったんだよ。


 私は、心置きなく飽くまでそれを眺めた。

 毘沙門天を愛して、はや五年。そのLOVE精神は、まだまだ尽きない。

 もとはといえばこのお寺を訪ねたのも、十二神将像を見るためでも有名な三尊立像を拝むためでもない。刀八毘沙門天に会いに来たのである。彼に会うためだけに足を運んだのである。ほかが無くとも、私は十分満足したというものだ。

 今日、こうして刀八毘沙門天にお会いできたのだから、もはや悔いはない。



 と、出入り口から、団体客がぞろぞろと入ってきた。ツアー客であろうか、年齢層は子供からジジババまでさまざまである。

 須弥壇エリアが、一気にガヤガヤと騒がしくなった。


 ——しょうがねぇ、退散するか。


 うっとうしい中で仏像鑑賞しても集中できない。一応お像は存分に見たことだし、ここは団体客に場を譲ろう。

 私は、後ろ髪を引かれる思いで、須弥壇エリアをあとにした。



 さて、御朱印をもらおう。

 私は、さきほどのカウンターに立ち寄った。今回は書き置き御朱印一枚、「刀八毘沙門天」をいただく。いただいた。好き。

 ついでに、当寺の写真集も購入した。しかもなんとさらに、毘沙門天の雑誌もあるではないか。見本をしかと確認して、それも即買いした。合計で5,000円はあったであろう。




 こうして私の寺院参拝は幕を閉じる。

 境内に飼われているハシビロコウを愛でながら、私は京都への帰路についた——。

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