日本語が違う

エリー.ファー

日本語が違う

 もしも、本当があるなら。

 そこに、君がいるなら。

 答えておくれ。

 この孤独に、名前を付けてくれ。

 赤く塗りつぶした時間が多すぎるんだ。

 助けてくれ。

 私は、宇宙の真ん中にいる。

 宇宙船は壊れてしまった。

 星々は美しく。

 私の命はその中にある。

 時間だけが、延々と私を囲い続けて、脳内の砂嵐が体外に出ようと叫び続けている。

 謂れなき言葉。

 悲しみに暮れた地球。

 あぁ。すべてが愛おしい。

 小さなクラブで、殺し合いが始まって、私を壊しにくる。

 私はただの旅行者なんだ。

 宇宙を見たいと思っただけなんだ。

 金を積んだんだ。

 なのに、今は、この。

 超高額の棺桶の中で人生について考えるしかない。

 余った金で変わる人生なんて何もない。

 絶望を高価買取してくれるような店も見当たらない。

 あぁ、知らなかったよ。

 地獄の沙汰も金次第なのに、宇宙では金も役に立たない。

 全く。

 宇宙は地獄とは別の世界が広がっている。

 きっと、私を同じ世界を見た者がいるだろう。

 きっと、私と同じ体験をする者が現れるだろう。

 きっと、私と同じ生き方をしている者もいるだろう。

 伝えるべきことは、ありふれている。

 当たり前のことだ。

 私は、間もなく死ぬ。

 この宇宙と一体となる。

 だから、聞きたい。

 答えてくれ。

 時間がなくてもいいんだ。

 頼む、教えておくれ。

 私は、何がしたかったんだろうな。

 ここに来て、闇夜の中に見える世界を知って。

 世界の中に黒があることを知って。

 その黒の中心に自分がいることを知って。

 地球に闇夜を創り出して来たことを忘れようとして。

 人類に不幸のすべてを押し付けて、何がしたかったんだろう。

 酒が飲みたい。

 まともではいられない。

 光の中にいる私を多くの人に知ってもらいたい。

 でも。

 もう、無理だ。

 私は自分の創り出した世界の中に、心を落としてしまった。

 自分で塗りつぶしてしまったのだ。

 悲しさではない。

 私が、明日も、明後日も、そして、一昨日も、昨日も、私だったということについての絶望なんだよ。

 伝わっているかい。

 君には、分かるかな。

 あぁ、分かるといいな。

 この上品で、しかし下劣で、絶望的でありなら、真理に近づいていると確信できる孤独。

 私は、ね。

 これに金を払っていたんだよ。

 分からなかった。

 今まで、何故、金を稼いできたのか分からなかった。

 今、この瞬間。

 ようやく分かったよ。

 私はね。

 金なんて無駄だったんだと、知りたかったんだ。

 貧しい家に生まれて、貧しいと思いながら地面を見て歩き、貧しさとは何かと考えて夜空の月を考えて。

 そして。

 いつの間にか裕福になった。

 貧しさへの復讐だった。

 すべては、自分の人生への戒めだった。

 私は、私は、ね。

 私のことが大嫌いだった。

 生まれて、この方ずっと嫌いだったんだよ。

 最初は、貧しさが嫌いだと思っていた。

 でも、違うんだ。

 だって、裕福になっても私は自分のことが嫌いだったんだからね。

 変わらなかったんだ。

 財布の中の札束も、カードの色も、自分の影響力も。

 嫌いだった。

 好きになれなかった。

 今、この場所にいることで。

 この冷たい宇宙に埋葬される瞬間になって。

 ようやく。

 貧しくなれた。

 何もない。

 私は何も持っていないんだ。

 抱えることもできない。

 抱えようとも思えない。

 きっと、酸素だってなくなってきたはずだ。

 私の人生は、豊かだった。

 私の人生は、波乱万丈だった。

 私の人生は、夢のようだった。

 多くの人を不幸にして、自分だけが幸福になって。

 それでよかった。

 今も、そう思っているよ。

 悔しいかい。

 だったら、金持ちになってごらん。

 さようなら。

 



 宇宙一孤独な大富豪より。

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