銀のモコモコ

灰汁須玉響 健午

第1話

一面の銀世界。

 トンネルを抜けようが抜けまいが、ここは間違いなく雪国である。毎年十一月の後半から雪が降り、ジングル・ベルの聞こえる頃にはすでにウンザリするほど降り積もる。はねてもはねても(この地方では雪かきを雪はねという)きりのない作業に、何度途中で雪かき用の大きなスコップとスノーダンプ(雪を運ぶのに使う道具で、金属の取っ手のついた大きなそりのようなものである)を投げ出そうとしたか分からない。

 しかも俺の家は一軒家。敷地もそこそこ大きく、庭もそれなりに広い。花畑を除いたとしても大型車なら二台、乗用車なら三台は余裕で駐車できる広さを誇る庭は、その分雪はねも半端な運動量ではない。摂氏マイナス十度から十五度の中で、コートを着ているとは言え汗をかくというほどなのだから、かなりのカロリー消費である。

 それでも、融雪機を設置した昨年からは、大分楽になったものだ。数十メートル先の雪捨て場まで行く手間が省けたのは、正直天にも昇ってしまいそうなほど嬉しい。なにせそれまではスノーダンプに山盛りに積んだ雪(雪の質にもよるが、だいたい二十キロ弱)を押して、庭と雪捨て場を何十回も往復しなければならなかったのだから、これは大きな労力の削減である。ちなみに、俺の最高記録は一昨年の大雪の日一人で行った時の五十一回だ。てんこ盛りに積もって、風除室(雪国には玄関と直結の小さな部屋があり、そこで雪を払ったりするのだ)のドアが開かない状態から雪はねを始め、途中からまたどっさりと降ってきたものだから、延々と三時間半、ずっと雪はねをしていたのだ。冬休み中でよかったと思う。学校があったら、やる気が出なかっただろう。

 とまあ、そうそうたくさん降られると、クリスマス・イヴに雪が降ってホワイトクリスマスだ、なんてロマンティックな気分に浸る気にもなれず、また降ってきたよ、くらいにしか思えなくなってしまうのは、決して俺の心が荒んでいるせいなんかではないと思う。いい加減ホワイトじゃないクリスマスが見たいね、俺は。

 そんな俺のささやかな願いなんて、十二月中旬にはとっくに打ち砕かれていて、それから十日ばかり過ぎたその日もせっせと俺は雪と格闘していた。朝九時に起床して、朝食を済ませると同時に試合開始のゴング。ジャージ上下に雪はね用(家族共用)のジャンパーコートを羽織って、二重の軍手と長靴を装備。愛用の強化プラスチックと金属製の大型雪かきスコップを片手に二十五センチほど積もった雪に挑む。

 重い。ずっしりと。

 この地方はボロボロに崩した発泡スチロールのようなパウダースノーが殆どだが、気温が変に高いとこうした湿度の高い、べったりとした雪になる。こういう日は、完全な力仕事だ。腕力対決となる。

 庭をよく見てみると、細い小道が出来ていた。おそらくパートに出かけたおふくろが自分の歩く部分だけを除けて行ったのだろう。おふくろはケーキ屋で売り子をしているので、今日はもっとも忙しいことと思う。なぜかって、今日はクリスマス・イヴだからさ。外見上は三十代中盤から全く歳をとっていないと噂される俺のおふくろは、ぽけっとした雰囲気の漂うメルヘンさんなので、ケーキ屋さんには持って来いの人材といえる。

いかんいかん。それよりも俺が今、しなければいけないことは雪はねだ。

 おもむろに融雪機のスイッチを入れ、雪を集め始める。ザックザックと一箇所に放り投げ、やがて小さな山ができる。いつもできるのはだいたい三つか四つ。山にして固めてからスノーダンプで切り崩し、融雪機へと放り込む。これが一番効率的で楽な方法なのだ。

 三十分程黙々と作業を続け、ようやく終了。融雪機内の雪がだいたい溶けたことを確認してからスイッチを切り、蓋を閉める。ほんの少し上がった息を吐きながら、風除室を抜け玄関へと入り、装備を解除。量が少なかったため、汗はかかずに済んだようだ。

 俺は手を洗いうがいをすると、冷蔵庫からパック入りのコーヒー牛乳を取り出し、コップに注ぐ。雪はねの後は、暖かい飲み物など欲しくは無い。冷たいのをグビッといきたいのだ。まずは一杯目を一気飲みし、もう二杯目を注いで炬燵に向かう。雪国は殆どが全館暖房なので、室内は暖かいのだが、炬燵には炬燵の良さがありこれは決して譲れないという結論に達し、うちには部屋の中央に炬燵が設置されている。この中の温(ぬく)いこと温いこと。ここに入ると、日本人でよかったなぁ、と本気で思う。

 適度な疲労感とじゃれあいながら、コーヒー牛乳片手に寛ぐ。座椅子からずるりと下がり、胸の辺りまで炬燵に入り込と、なんだかうとうととしてきた。だらしない姿勢のまま窓のほうを見ると、また雪がぱらついてきていた。

 おいおい、勘弁してくれよ。このペースだと、また夕方に一回、はねなくてはいけないではないか。

 一人ため息を吐きながら、俺は更に炬燵に埋まることにする。なんだか気持ちがいい。こういう小さな安らぎと幸せを感じられることが人生には大事なのだよ。そう、今日がクリスマス・イヴだとか、それなのに友人は殆どが彼女持ちのためパーティさえ開かれないとか、おふくろの持って帰ってくる売れ残りのケーキでとりわけ何のプレゼントも用意されないささやかな家族クリスマスでイヴを終えるとか、全然に気にならない。ああ、気にならないとも!ってか、中学三年生だろ?受験生だろ?勉強しろよ、みんな。いや、みん

なエスカレーター式で上がるんだったな。必要ないか。俺もだけど。中学に入るときほんの少し頑張ったから、高校受験はしなくて良いのだ。

 そんなことを考えながら、首の辺りまでもぐりこむと、見事に足が向こう側から出てしまった。身長を考えると当然のことだが、それが妙に悲しい。

(クソッ!)

 俺は舌打ちして炬燵から這い出た。

ほんとは滅茶苦茶気になるさ!悲しいさ!彼女欲しいさ!どうして俺だけ独りお庭で雪はねか!

 叫んだ。力いっぱい。ただし、心の中でだけど。

 座りなおして二杯目のコーヒー牛乳を飲み干すと、俺はすぐさま二階の自室に向かう。少し褪せたブルーグリーンのジーンズと、黒のハイネックセーターを着込み、コートとマフラーを装着する。財布、携帯電話、定期券(パスモ)入りのパスケースそして、家の鍵をはじめとする重要な鍵が数個付けられたチェーン型キーホルダー。とりあえず必要不可欠なものは全て持った。

 俺は階段を降りて、玄関に向かい靴を履く。湿った感じは無いが、ひんやりしている。こんなことなら予め暖房機の上にでも置いて暖めて置けばよかった。しかし、それを今嘆いても後の祭りだ。冷える足元を我慢して、俺は外への扉を開く。

 外界は凝りもせず銀世界。空もとち狂ったように雪を降らせ続けている。

バカか?お前は。

緩慢なペースで白い綿切れをちらつかせている天に、俺は悪態をつく。こんな微弱すぎる抵抗なんて無視してくれれば良いものを、自然界は律儀にも一際強い北風を吹かせて、俺の最後の反骨心をも奪い取ろうとする。そうさ、いつだって強者は横柄に振る舞い、弱者はその理不尽さを受け入れるしかないのだ。

案外立派なつくりの分厚いドアを閉め、鍵をかける。ドアノブを下げて引いて、本当に開かないかどうかを慎重に確認する。ここでしっかり確認をしないと、心配性な上に典型的A型の俺は、道の途中で引き返してきて戸締りの確認をしなければいけない不安に捕らわれる。

大丈夫。我が家のドアはロックされた。ガスの元栓もしめたし、炬燵のスイッチも消したはずだ。これでとりあえずは心置きなく出かけられる。

俺は風除室から出て、一歩を踏み出す。

別になんてことは無いけどね。何年も外の世界と関わりのなかったひきこもり君なら分からないでもないが、俺は幸い普通に学校にも行っているし、人並には人間関係を保ちつつ生活している。そんな俺には家からの第一歩に、さほど価値など無い。

さっき綺麗にしたばかりの庭は、もう二、三センチ雪が積もっている。これだよ。こういうことされると、地道な頑張りなんてものは無意味に思えるのだよ。そして今日も微量ながら俺の心は荒んでいく。「雪、素敵ぃ」なんて、はしゃいでいる男も女も、勘違いしてはいけない。雪は敵だ。それ以外の何者でもない。覚えておいて欲しい。

ともあれ、こうこうと積もりゆく雪を無感情に踏みしめて俺は歩き出す。さて、どこに行こうか。俺には行くべき目的の場所などありはしない。家をでて十歩と歩かないうちにそれに気付いてしまった自分が悲しい。そして、考えるまでも無くどこに行っても、不毛な時間の消耗が待っていることを確信できる現状況が果てしなく寂しい。

いや、いけない。最初からこんなに鬱になってどうする。今日はクリスマス・イヴだ。行動すれば、いつもと違う何かに出会うかもしれない。カツアゲとか引ったくりに遭遇するのは勘弁だけどね。

そうだな。まずはより多くの人間が生息する場所に行かないことには、話は始まるまい。となれば、中心都市に出て行くしかないだろう。そして中心都市に行くには、駅だ。というわけで、俺は駅までの二キロ半を歩き始める。降り続く雪が、俺の頭に「バス」の二文字を掠めさせたが、ここはしっかりと断固拒否。理由は、簡単。お金がもったいないからだ。たかが百六十円、されど百六十円。それでなくても、駅まで行けばおのずと街までは電車を使うことになる。経費は、削減できる時に削減しておくべきなのだ。

十二月二十四日の午前十一時に、雪中歩く人間は少ない。いや、むしろ皆無だ。俺以外は。白い鎧をつけて機能しなくなった遊具のある公園を過ぎ、レンタルビデオショップを横目に通過。更に郵便局、書店、ゲーム取扱店、雑貨店を通り越して、銀行とパチンコ屋が二、三軒連なる地帯に入る。そこを潜り抜けると、大型のショッピングマートと一体化した駅に到着する。

さすがに、駅周辺には人がいた。俺はやっと会えた自分以外の人間に、見当違いな安心感を覚えながら、駅構内へと進んでいく。自動改札口に差し掛かり、俺は定期券を入れる。

『今日までの定期券です』

 冷たい感じの機械的な女性の声が、親切にも期限を教えてくれる。分かっているよ。定期券に大きく『十二月二十四日まで有効』って書いてあるから。俺、字読めるから。わざわざ言うなよ、鬱陶しい。

 ああ、ダメだ。俺の心は大分荒んでいるな。

 片道二百六十円。高い、高いよ、国鉄なのに。定期が無ければ、無意味に行こうなどとは思わない交通費だ。しかし、定期券のお陰で気兼ねなく行けるってものさ。

 最寄りの駅から通過すること六個目で、やっとこの辺の、いや、この大地でもっとも栄えていると思われる中心都市に到着する。そう、日本で『実際に見るとあっけない名所』ランキングで、間違いなく五本指に入るであろう例の時計台のある街だ。最近は駅直結の一大ショッピング施設の集合体が完成し、駅周辺の雰囲気は垢抜けたが、だからといって時計台が面白くなるわけではない。駅からは少し距離があるし。

でも、いくらか都会だよ。 うんうん。街にきたって感じがするよ。もうため息がでるほどクリスマスだよ。ホント。

 ホワイトイルミネーションも始まっていて、なんともロマンティックが止まらないってもんさ。誰か止めてやってくれ。

 もちろん、中心都市に着いたからといって、俺に今後の予定が湧いて出るなんて事はありえないわけで、どうしたものかと首を傾げる。

 目の前には、東京タワーのパチモンや大通りに続く道。反転すれば……なんだろ、反対側はカメラ屋の名を騙る大手のマルチメディアな電気屋までしか行ったこと無いな。

 まぁ、いい。ここまで来れば、あとは突き進むまでだ。人の多い所=大通り方面だ。直進直進。

 俺は勇ましく歩き始めた。ここでも地下鉄は使わない。三キロちょいくらい歩いてみせる。人は歩くために足がついているのだから。

 俺は歩きながらそれとなく街行く人々の人間観察を怠らない。これはこれで、案外面白いものなのだ。こんなことに楽しみを見出してしまう自分が暗いとは思うが、特にどうすることもできない。

 え~と、早くないか?

なにが早いって、カップルたちのいちゃつく時間がだ。まだギリギリ午前中ですよ?いくらクリスマスだからって、早すぎるだろう。何もこんな昼真っから恋人同士で街中を徘徊せんでもよかろうに。夜が盛り上がらないだろう。だが、いるものは仕方が無い。剣道二段プラス、真剣振り回して慣らしたこの腕を駆使して大通りの一丁目から百人斬りを目指して片っ端からカップルを辻斬りしていっても構わないが、それはさすがに捕まると思う。その場の警官は切り捨てられても、機動隊と狙撃チームに出てこられたら、刀一本では対抗できない。なので、ここは大人しく無視することにする。

 かの有名、かどうかは微妙な大通り公園。あともう少しすると、スノーフェスティバルの主役ともなる雪像の準備がされる。年々クオリティが下がっていると噂のあれだ。特に今年は人員不足が深刻で、それどころではないはずだが、どうなのだろうか。いやいや、彼らは今も世界のどこかで、俺たちの代わりに命がけで頑張っているのだ。別に雪像などどうでもいいではないか。それよりも本気で無事を祈る。

 俺は何とか雪に埋もれなかったベンチに腰掛けて、一休みをする。

 いいね。この生産性のなさ。たまらんね。街に出てきたはいいが、当然と言うかはやりというか、何にも起きないし。分かってはいたのさ。でも、万が一、億が一に賭けてみたいじゃない?俺はなんだか本当に虚しくなってきて、空を見上げた。この雪の舞い散る中で、大通り公園のベンチに座り空を見上げるやつはそうそういない。俺以外いるわけが無い。孤独だなぁ。この場所には出店も何にも出てないので、カップルたちも通過すらしない。その分のどかでよいが、そんなことにホッとしている場合ではもちろん無い。

 なんか、起きないかな。

 やっぱり、近くの書店で読めそうなファンタジー小説でも買って、一人コーヒーを片手に読みふけり、妄想の世界へドロップアウトしていたほうが良かったか。

 そんなことを真剣に考えていた。

 はて?俺は道端に転がっているあるものを見つけた。一見長方形の箱っぽくて、真っ白で、手に持つと丁度よい大きさの物体。否、それはハードカバーの本だ。タイトルも何も書かれていないように見えるが……。

 俺はそれを手にとって見た。雪の上にあった(というか半分埋もれていた)所為か、汚れは全く無く、ハードカバーが功を奏してふやけても居ない。そもそも、放置されてからそれほど時間が経っていないのかもしれない。

 俺の胸は少し高鳴る。

 これは、この展開は、もしや(ニヤリ)。

 この本が、不思議な本だったりして、そしてその物語の中に引きずり込まれて冒険を……はい、ストップ。いくらなんでもそりゃ無いでしょう。俺も《将来の夢は?》と聞かれて、地上に三分程度しかいられない巨大ヒーローの名前を叫ぶほどガキではない。あり得る事と、あり得ないことの区別ぐらいはつくさ。

 でも、めくったね、俺は。その本を。

 するとどうだろう。一ページを開くと、まばゆい光が視界を奪い、俺を別の世界に誘(いざな)う……わけない。一瞬光って見えたのは、そのページが真っ白で何にも描いてなかったからだ。俺はパラパラと捲った。

 ミステリィだ。意味違いで。

 全ページ白紙。タイトルもなし。ページ番号もなし。

 はは、ゴミか。

 なんか、涙が出そうになった。きっと、編集の過程で出来た、ミス本か何かか?誰が捨てたか落としたか知らないが、単なるゴミに様々な期待を抱いてしまった辺り、俺は相当寒いやつではないか。俺は結局なんでもなかった白い物体をゴミ箱に入れると、またベンチに座り本日最大のため息を吐いた。

 俺が悪いのか?チクショウメ。

 うな垂れて、地面を見つめた時だった。

「フンッフフ、フンフンッフンフンッ、フフフフフンッフンフン」

 突然、陽気で幸せそうな鼻歌が聞こえた。高音で軽やかな『赤鼻のトナカイ』である。やけに近い音だと思って、俺は空から目を正面に戻すと、一人の小柄な少女が何かを大事そうに抱えて目の前を通り過ぎるところだった。

 俺はパチパチと瞬きをした。特に視神経に異常は出ていない。では、本当に今俺の瞳に映っているのは、現実なのだろうか。だとしたら、これは……非常に貴重なチャンスと言えなくも無い。どうしてかと聞かれれば、目前を通過しつつある少女の横顔は、驚くほどに可憐であったからだ。

 背中まで届く濃い栗色の長い髪を両サイドだけ三つ編みにして、ベージュのふかふかのベレー帽を被っている。茶系と白でコーディーネートされているらしく、コートは赤みの少ない茶のハーフコート。コートの裾から出ているのは膝丈のダークブラウンのプリーツスカート。

 なんか知らんけど、凄ぇ可愛い。

 いくつぐらいだろうか。顔立ちや背格好からみると、俺とさほど変わらなく見えるが、両手でしっかりと何かを抱きかかえている様子が、なんとなく彼女を幼く見せている。

 雪道を軽い足取りで歩く少女を、俺はじっと目で追っていた。

 こんなに可愛い女の子がそれなりにお洒落して、雪の降る大通りでなにをしているのだろう。そう思ってすぐに、決まっているじゃないか、と自分に突っ込みを入れる。

 誰かと待ち合わせをしているのだ。上機嫌なのは、これから愛しの彼に会うからで、大事そうに抱えているのは、きっと手作りかなんかのプレゼントに違いない。多分壊れやすいものなのだろうさ。俺のガラスの心張りに。

 嫌気が差すほどまともで信憑性の高い推測をしてしまったために、俺の気分は更にブルーになった。

「さて、この辺にしよっか」

 どっぷりとブルーの深淵にはまっている中、俺の右斜め前方五メートルのあたりで、少女は立ち止まって呟いた。

 独り言か、と思ってみていると、それはどうやらさっきから抱えている腕の中の何かに話しかけたようだった。少女は隣のベンチ(俺の座っているベンチからは六、七メートル離れている)に腰を掛けると、両手を伸ばして胸元からそれを取り出した。取り出されたそれは、プルプルと首をふって嬉しそうにピコピコと手足を動かした。そして尻尾も。

 少女が抱きかかえていたのは、どうやら小さな動物のようだった。そのものを目撃した俺が、小さな動物などと曖昧な表現をしたのにも理由がある。ヌイグルミを掲げるように少女の手にしている動物は、いったい何のカテゴリーに属するものなのか、一目では見当がつかなかったのだ。

 茶色でフサフサの毛が生えていて、手足がラブリーに短めである。ちょこんと小さな尻尾があって、顔は犬のようにも見えなくもないが、丸い鼻があって、耳があって、その上には、鹿の角をデフォルメ化したような形のモノが突いている。その雰囲気や動きから、それが何かの子どもあることは分かるが、何の仔なのかがさっぱり分からない。なんなのだ、あの動物は。

 俺が未知の生物に疑問を抱いている間にも、少女はニコニコしながら謎の生物に靴らしきものを履かせて、地面に降ろす。白い大地に下ろされたその動物は、「キャン、キャン」と子犬に酷似した鳴き声を出しつつ、少女の座っている前のスペースを楽しげにクルクルと走り回っている。

 妙な光景だ。

 無意味にはしゃぐ角の生えた変なチビ動物とそれを笑顔で見守る美少女。しかもクリスマス・イヴに。

「うふふっ、ブリッツェンは本当に雪が好きね」

 謎の小動物に穏やかで優しい笑みを向ける少女。ブリッツェンっていうのか、それは。これで子犬相手だったりしたら、とても微笑ましい光景なんだがな。

「キャンッ、キャンッ」

「そうね。でも、遊びすぎると疲れて動けなくなっちゃうから気をつけないとダメよ」

「キャウン。キャンッ」

「うん。大丈夫。心配しなくても、まだまだ時間はあるわ」

 会話している。普通に会話しているじゃないか。本当に通じているか否かは知る由もないが、妙に会話がかみ合っているように見えて怖い。

 俺は少女とブリッツェンと呼ばれた動物とのやり取りを、じっと観察していた。いや、だって見るだろう?こんなヘンテコな状況に遭遇する機会は極めて少ないのだから。

 今ひとつ懐疑心に苛まれながら直視していると、手足の短い小鹿モドキが、俺のほうを向いた。そして、そのつぶらな瞳と目があった。む、確かに正体不明ではあるが、あの生き物は案外可愛いかも知れない。無類の小動物好きである俺のハートが、ぐらりと揺れる。

「キャンッ」

 ヤツは俺に向かって走ってきた。足の先が少しばかり積もっている雪に埋もれて、それで無くとも短い足が余計に短く見えて面白い。それでも、小鹿モドキは一直線に俺に向かってくる。

「あっ、だめよ、ブリッツ!」

 少女は立ち上がって止めるが、ヤツはすでに俺の足元に到着しそうである。それなのに、そいつは全く勢いを殺そうとはせずに、代わりに頭を低く構える。ちょっとまて、その姿勢は、どう考えても突撃体勢ではあるまいか。なんとなく漫画チックな、それでいて如何にも硬そうな角が、何の迷いも無く俺に迫ってきている。

 避ける……べきか?

「だめ、ブリッツェン!」

 少女の先程よりも必死な制止の声が聞こえる。

 ゴツッ!

 途端、俺のすね(そうさ、弁慶の泣き所ってやつだ)に鈍い衝撃と激しい痛みが走る。

「ぐぉッ」

 思わず声がでた。だって、痛かったんですもの。俺は歯を食いしばり、緩慢な動作で負傷したすねを押えながら、ベンチから崩れ落ちてしゃがみ込んだ。

「ああっ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 大丈夫じゃないです。凄く痛いです。なんかあの角、見た目とは遥かに異なる威力でした。

心配そうな声と共にパタパタと少女が駆け寄ってくるのが分かる。しかし、今の俺には、笑顔で返せる余裕は無い。くそっ、マジで痛い。

 しかし、俺は頑張った。可愛い女の子の前では、弱音をはかないのは、男の子の意地である。

「う、うん。ああ、平気。問題ない。大丈夫だ、きっと」

 支離滅裂気味に答え、俺は顔を上げる。

 うわっ、可愛い。もちろんブリッツェンがではなく、少女がだ。

 俺はよろよろと立ち上がって、無事をアピールする。じんじんしているけどね、実際。

「本当にごめんなさい。ほら、ブリッツも謝りなさい」

 満足げに尻尾を振っていたブリッツ(ブリッツはおそらくブリッツェンの略称)をひょいと抱き上げて、少女はペコリと頭を下げる。だが、当の子鹿モドキは嬉しそうに「キャンッ」と鳴いて、全く悪びれたそぶりを見せない。まぁ、仕方ない。名も知らぬ少女よ、君の可愛さに免じて、全てを許そうではないか。

「いや、ホントに大丈夫だから」

 俺は苦笑いをしながら言った。

「……?」

 謝罪のお辞儀から向き直った少女は、俺の顔見て可愛らしく小首を傾げた。ぱっちりとした二重の大きな瞳に、程よく高い鼻。小さな口と、卵形の綺麗な輪郭。見間違えでも気の迷いでも、イヴの日の寂しさが起こす美人補正でもない。この少女は紛うことなく可愛かった。で、どういうわけかその少女は不思議そうに俺を凝視しているのだが……。

 次の瞬間、思いも寄らない爆発音がした。リアリティのない「ドッカーン」という音だったか、俺はビックリして少女から目線を逸らした。方向からして、前方の……そう、東京タワーモドキのある辺りだ。事実少し離れた方で、人々の騒ぐ声がする。

 驚いて振り返ったのは、目の前の少女も同じだった。ブリッツェンもキャンと一鳴き。

 俺は音の原因を探るべく注意深く眼を凝らしてみる。それほど遠い距離ではないはずだが、一体なにが起こったのだろうか。そもそも、現代日本の日常生活において爆発音など本来あるはずは無い。

 ん?

 俺の脳が、俺自身の視神経に対して違和感を訴える。なんか、おかしいぞ、と。

 ええと、なんちゃって東京タワーの半壊している姿が見えるでござる。しかも、その後方には、巨大な……。巨大な……なんだろう?即座には、形容しにくいものがいた。大きさはタワーと同じくらいで、色は黒。そして形は人型ではあるのだが、いやむしろ、人型過ぎて困ると言うか。そう、例えるなら、よく人間を簡略化して書くとき、マル頭に線で両手両足と体を書くだろう。あれである。あれが、その頭の割には細っこい腕をぶんぶん振り回して暴れているのだ。おそらくそのせいでテレビ塔は半壊したのだろう。

 迷わず俺は目を擦った。

 そして再び凝視。うむ、居る。変わらない。

 うわっ、やばいよ。きっと、俺の頭ン中が。こんな激しくも明確な幻覚を真っ昼間に見ちまうなんて、人間として危ない。

 俺が若干真剣に精神科に行こうかと心に決め始めた時、目の間に少女が呟いた。

「ふ、不特定単数……こんな街中に?」

 不特定単数?何の事だ。

「仕方が無いわ。市民の安全が最優先よね。わたしたちだけで排除するわ。ブリッツェン、半径三メートル以内にパワーフィールドを展開して!」

 少女はそう言ってブリッツェンを地面に降ろすと、片手を宙に翳す。

「プリーズフォワード」

 叫ぶと同時に、翳した手の中に大気中のなにかが凝結し始め、やがては細長い棒になった。形的に言えば、杖っぽい。

 特撮?最新グラフィック?

 いや、俺が今見ているのはリアルタイムであり、CG処理の余地など無い。では、この俺の目と鼻の先で行われている奇怪な現象はなんなのだろう。

 俺が呆気にとられてボーっと見ていると、先ほど降ろされたブリッツェンがいつの間にか俺と少女の周りを走り回っており、一周した後に「キャウン」と合図をした。

「ありがとうブリッツェン。じゃあ、行くわよ!……あ、あなた、ごめんなさいね。少しだけ、エネルギーを拝借します」

 少女は突然振り返り、俺に向かってそういうとニッコリと微笑んだ。

 いい笑顔だ。なんとなく癒される。じゃなくて、今なんていった?

「ドレイン」

 少女は言って先刻無から生み出された杖で地面を突くと、さっきブリッツの駆け回っていた円が、薄っすらと光り、それはすぐに強い光になった。

 まるでそう、魔法陣みたいだ。なんてのん気なことを考えていると、急に息苦しくなってきた。呼吸するのが苦しいというよりも、百メートルを全力疾走した直後のような、それでいてインフルエンザに侵されている真っ最中にマラソンをしてしまったような、とにかく絶望的なまでに体力が奪われた状態になった。しかも一瞬で。俺は耐え切れずにしゃがみ込んだ。膝から崩れ落ちなかっただけでも奇跡な感じだ。

 何?これ。

 病気?

 まさか恋……の訳はないか。恋のドキドキとは根本的に違う。恋にこんな疲労感はない。

 じゃあ、生気を吸われている、とか?

そんな馬鹿な。誰かが、地球のみんなからできる限りの元気を分けてもらって作り出す、星の一つくらいは軽く消滅させられるような破壊系気孔術を行っているわけじゃあるまいし。

しかし……。

俺は荒い息を吐きながら、目の前でなにかやろうとしている少女を見つめた。

「彼(か)の者の力を糧に、汝を欲す。闇を切り裂く銀白の獣よ、我が呼びかけに応えよ!」

 自らの足元に小さな円を描き、呪文めいた言葉を言い放つ少女は、口調も後姿も真剣そのものである。

「天・魔・降・臨!」

 渾身の力をこめて、地面を杖で突く。まるで魔法使い気取りだ。俺がもっと冷静で、なおかつ壊れたテレビ塔やその犯人であると思われる、落書きみたいな巨人を目にしていなければ、きっと、いい歳してそれ系の番組にはまっているイタイ女の子としてお悔やみを申し上げなくもないのだが、今の彼女は妙に本物っぽかったり、実際無から杖を取り出してみたりしているので、非難的な感情は湧かない。

 杖で突かれた円の中心は鈍く光り、急激に無数の文字が浮かんだ。どれも見たことがあるようで、実はまったく見覚えのない文字だった。光はすぐに円全体に広がり、やがて雪とコンクリートの二層で構成されているはずの大通公園の地面が、ぐにゃり、とゆがむ。

 眩しい光と、竜巻のごとき正体不明の風に包まれて、地面からゆっくりと何かが出て来ていた。

「シルバーファング!」

 確かめるように少女が叫ぶと、それを合図にその何かは魔法陣から一気に飛び出した。が、光と煙めいたつむじ風のせいで、俺はシルエットしか確認できない。なんとなく丸い印象の影だったが。

「トランス・リボルバー」

 少女は調子が上がってきたらしく、杖をくるくると器用にまわしてなにやら叫ぶ。回転させていた杖(いや、イメージ的に魔法のスティックと表現したほうがいいか?)をビシッと体の前で止めると、そのスティックは出てきたとき同様にあやふやな輪郭を描き出し、見る見るうちに回転式の拳銃に姿を変えた。形はそう、六インチのシビリアンモデルってところか。

 少女はもう完全に特撮ヒロイン気取りで巨大落書きを見据える。一方俺は、指摘、突っ込み、その他諸々をすべきだとは思いながら、著しく体力を奪われているためにそれもままならない。傍観するしかないようだ。

「さあ、シルバーファング、弾丸に変身……」

 そう言いながら勢いよく足元を見た少女だが、なぜか語尾が弱まり、絶句した。

 どうかしたのかと思い、俺も少女の視線の先を見やった。先ほど魔法陣があった場所。何かが登場し、光と煙にまみれていたところは、すでに煙幕は消え、光も弱まっていた。そのせいで、シルエットしか確認できなかった謎の物体(生物?)シルバーファングの全貌が明らかになる。

 円の中に佇んでいたのは、銀色の獣だった。いや、銀色の毛の生えた、全体的に丸い、でも短い手足があって、尻尾もあって、耳もある。ええと、銀色の子犬?まてよ、よく見ると尻尾が二本ある。だからつまり、何だろう。毛玉?

「ワオーン!」

 目をぱちくりさせている少女に対して、銀の正体不明はりりしく遠吠えを上げた。大きさ的にも、ラブリーさでも、そして奇妙さでもブリッツェンとトントンの勝負を展開できるであろうその毛玉は、二本の尻尾をパタパタさせて、やる気十分である。

「あちゃ、またミスっちゃった……」

 先ほどまでのテンションからどん底に落ちた様子の少女は、困った顔をして額に手を当てた。

 ミス、なのか。

 そうこうしている間にも、落書き巨人は腕をぶんぶん振り回して街を徘徊している。このままではこの辺一帯は壊滅してしまう、かもしれない。まだ結構遠いけど。

「と、とにかく、弾丸に変身して!」

 悩んでいた少女だが、意を決したように銀の毛玉に向かって命令する。

 毛玉の愛くるしい瞳が、自信満々に輝く。待ってました、といわんばかりだ。銀の獣は短い足で地面を蹴ると、ポンッと起用に宙返りをした。そして、着地するときにはすでに拳銃の弾丸に……なっていたのではなく、ただ丸まっているだけだった。そう、あのクッションで犬が眠るときのような格好で。

「…………」

 銀のボールと化した獣を見て、しばし沈黙する少女。その後、

「ああ、やっぱりだめだわ……」

 そう言って頭を抱え込む。気持ちはわかる。きっと彼女の思い通りのものが出てきていたなら、その素敵なリボルバーの弾丸に変身する予定だったのだろうが、今目の前にいるのはやる気だけはマックスの、へんてこな生き物が丸まっただけに過ぎないでかいボールだ。この生き物があの落書きを倒せるとは夢にも思えない。

「でも!」

 少女はキッと顔を上げた。

「一度召喚した以上は仕方ないわ。あなた、役に立ってもらいますからね」

 半ばやけにも聞こえる少女の決意。

 彼女は丸まっているだけの銀の毛玉を見つめて、手にしていたリボルバーをくるりと回し、もう一度叫んだ。

「トランス・九番アイアン!」

 はて?

 今なんつった?

 九番、アイアン?

 アイアンって言えば、あのゴルフで使うあれだよな。なんて思ってみていると、リボルバーは細長く変形し、それはもうなんていうか、思い描いたとおりのゴルフ用具が現れた。

「行くわよ!我、アンジェリカの名の下に、魔を払う銀の弾丸……?よ、今こそ悪しき異形のものを貫け!」

 少女は「弾丸」の部分で毛玉を見て言葉の中に疑問を浮かべたが、なんとか言うべき事を言い終えたらしく、アイアンを大きく振りかぶった。

「ハイパー・インパクトォォォォオ!」

 意味不明だが爽快なかけ声とともに、今までの失敗の憂さを晴らすかのごとく豪快なスウィングを見せる。

 カキーン!

「グフォ!」

 痛快なインパクト音と、刹那に聞こえたもだえ声。あの獣、本当にただ丸まっていただけではないのか?

 俺の心配は誰にも届かず、思い切り振りぬかれたアイアンの先にはきれいな弧を描いて落書きめがけて飛んでいく銀毛の塊。思わず「ファー」と叫びたくなるナイスショットだ。

 それにしてもあの子、かわいい顔して意外にパワフルなことをやってのけるものだ。

 ドゴ―ン!

 あ、銀玉着弾。少女の打った銀の獣の塊は、激しい爆裂音と共に落書きの巨人の黒い顔面に直撃した。それまでやりたい放題やっていた巨人はぴたりと動きを止め、やがて顔面を覆っていた煙幕(着弾と同時に発生)が消えるころに、全身がゆがみ始め、ついには蒸発してしまった。

「やったぁ!ちょっと手違いはあったけど、結果オーライよね」

 少女は消え行く巨人を見て、勝利のガッツポーズ。手からはいつの間にかアイアンが消えている。彼女は満足げな表情を浮かべると、はっと何かを思いついたようにポケットに手を入れた。ごそごそと探った後、出てきたのは白い卵型の折りたたみ式携帯電話だった。開いて、なにやら番号を検索しているもよう。

「あ、もしもし、隠蔽班ですか?この周囲一帯の修復、記憶の改ざんをお願いしたいんですけど……はい、大丈夫です。死人は出ていません。タワーは壊れちゃったけど、なんとかなりますよね?ええ。それは、ええと……、実は一人巻き込みました。はい、はい。では連れて行きます。はい。わかりました。では」

 電話の向こうと、一通り会話を済ませる少女。あれか、展開的に秘密の組織との連絡か。まぁ、ここまでベタだと逆に安心して見ていられるよな。って、何をいっているのだろう、俺は。

 目の前の事件は一件落着したものの、まだ体力の戻らない俺は、なんとか力を振り絞ってベンチに戻ろうと試みる。雪の上よりはましだろう。

 が、俺がよたよたと立ち上がるより先に、少女が勢いよく振り向いた。

「あの、本当に申し訳ないのですが、一緒に来てもらえますか?ええと、エネルギードレインの影響がないか検査をしますので」

 なんとも当然のごとく、可愛らしい顔で言う少女に、俺は拒絶の意思を力いっぱいこめた苦笑いをする。

 今更で非常に言い出しにくいのだが、これ以上はかかわりたくない。いや、かかわっちゃいけない。

 思考よりも、本能がそう訴えていた。

 もしかしてすでに手遅れか?

「と、いうか、来てもらいます。決定です」

 それを聞いて、俺は今度こそ残る力の全てを使って逃走を図る。人間とはすごいものだ。先ほどまではほとんど動けなかったのに、必死になればまだ十分に走れる。決して早いとはいえない速度であるが、この場からは逃げられるかもしれない。

「あ、ちょっと、逃げないでください」

 逃げる俺を明らかに追ってきている様子の彼女。もういいです。結構です。面白い物を見せてもらいました。わたくしめの現実逃避願望も、嫌って言うほど満たされたので、どうかもうお引取りください。そしてボクのことは放っておいてください。

 そんな風に心の中で叫びながら早歩きのようなものをしていると、目の前の道路に黒塗りのワゴンと乗用車が三、四台止まるのが見えた。

 来たよ、きっと秘密結社の連中だよ。くそう、本物かよ。

「もう、逃げないでって。えい!」

 背中の方から少女の声が聞こえて、何かと振り替えるまもなく首の後ろに鈍痛が走った。

あぅ、やられた、と思った瞬間には視界はすでにブラックアウトしつつあった。

 最後の映像は、棍棒をもった少女の穏やかな笑顔だった。


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