翡翠と瑠璃~心を闇に閉ざした青年と男性を怖がっていた少女~

アフロもどき

★彡プロローグ

★彡


 それは、絶望への入口だった。


「なんで、てめえらは俺に対して攻撃してくるんだ!」

「それは当然だよ。お前が周りと違うから」

「消えてくれない?鏡見なよ。お前ほど気持ち悪い顔はない」

「女の子に暴言を吐かれた程度で手を挙げるとか最低の男」


「お前は、生きていちゃダメなんだよ!」

「やるべきことをやっていないのに逃げようとしやがって」

「勉強しているだけの奴、例えばお前みたいな奴は本当にクズだな」


「テストの時に勉強しないとかお前はやる気があるのか!」

「勉強家?何もできない奴がそんなこと言うのか!」

「お前の努力はすべて無駄だ」

「どこへ行ってもうまくいかない」


 翠夢は、そんな悪夢を見る。絶望からの出口だった。


★彡


「ああ。いつもの夢だ」

酷い汗をかいているが、既に慣れてしまったのかあまり動じていない。

「今の学園に居ようが、過去から抜けることは出来ないのかもしれないな。とりあえずシャワーを浴びてから、出発するか」


☆彡


 翠夢。よくわからない名前だが、親に聞いたところ、深く考えずに名前を付けたと言う。しかし、妙な夢を見ることが多く、そういう意味では名前に合っていると、自分で考えているようだ。

 また、一応外観は年相応といったところのようだ。全体的には悪くはなさそうだが、今まではどうにも人に嫌われやすかった。

 その理由が、古い考え方に拘泥し続けることが出来ないことにある。住んでいる環境があまり良くないと自分で感じているようだ。他人に対して優しいとも言い難く、そうなろうとしても理解されず、怒りを買うことすらあった。これを繰り返すうちに、他人に対しての興味が薄くなり、表情も薄くなった。


 翠夢は、何故か厄介な人に纏わりつかれやすい。あまり否定的な態度はとらないのだが、纏わりつく厄介な人々を振り払うために、少し遠い場所へ通っている。といっても、特に問題なく通えるところである。

 しかしそれもある程度だけ。何故か今でもついてくる、厄介な不良達。排除したいが、それもできない。中学当時から先生には友達だと勘違いされており、それを利用して翠夢は迫害を受けていた。割れた窓理論のように、そういう人が周辺にいると、まともな人が周辺に居なくなり、そういう人しか周辺にいなくなる。

 こいつらを何とかすることが、目標の1つだった。


 田舎者としか言いようのない古い考え方に拘泥し続ける者に、翠夢はずっと苦しめられていたのだ。今の学園はかなり新しい考え方をしており、それだけでなく考え続けることを意識しているため、翠夢はそこに行くことだけを考えていた。全寮制なのもあり、ここであれば、考え方が間違ってないと思えるし、他人に対してもそこまで悪い態度をとる必要がなくなっていった。


 故に、翠夢の一番の楽しみは学園内にあった。


☆彡

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