付き合い始めてから初めてのデート・・・の帰り

☆彡


 翠夢と瑠璃は夕食を済ませ、手を繋ぎながら帰るはずだったのだが、少し公園というか、暗い所に翠夢が誘い込んできた。

「こっち来て」

「ちょっと怖いけど、2人なら」


 大きな木とちょっとした広場。日が暮れており、街灯が光っている。

ここにはカップルが多数いる。見る限りでは5組くらいはいるだろうか。それぞれがただ話をしているだけではなく、人によってはカップルでしかやるべきでないことをしているようにも見える。

「ちょっと、恥ずかしい」

「なら、見えないところ、木の後ろに行こう」

うなずく瑠璃。身体が少し震えているが、怖いのだろうと翠夢は思った。

だから、繋いでいる手の力が少し強くなる。木を背中にして、翠夢は振り向いた。ここなら周辺には見えないだろう。


☆彡


 ここで2人は他愛のない話で盛り上がった。そして、同時に2人は聞いた。

「異性としたことある?……あっ」

 まったく同じ話を同時にしてしまい、似たような反応をする。

 そのうち、瑠璃が少しずつ近くに寄ってきた。瑠璃の身体は暗さと男性恐怖症、この後起きると思うことの不安でで震えていた。

 翠夢はその瑠璃を恐る恐る抱きしめた。瑠璃を怖がらせないように。

「怖いか?」

「…はい。でも、ペースを合わせてくれるから、大丈夫だと思う」

瑠璃も翠夢の背中に手を回した。優しい翠夢のハグにより既に震えは収まっていた。

 ハグを止めて、2人は両手を繋いだ。瑠璃は耳まで赤くなっているためか、目を背けようとしているが、好きな人を見ていたいという気持ちが勝っているようだ。目線が合っている。翠夢と瑠璃は少しずつ顔を近づけていく。既に2人は、次にしたいことが同じことだとわかっているようだった。


☆彡


 翠夢と瑠璃は不安を感じたのか、吐息がかかる距離で止まった。

「本当にいいのか?いいんだな?二度目はないからな」

「……はい、受け入れます。でも優しくしてください」

 瑠璃は、この後起こることを想像したのか、目を閉じた。また、震えてしまう。翠夢は一度、手を離してハグに体制を変える。

「あっ…」

「怖がってる子にこれ以上の行為は出来ないから」

「でしたら、抱きしめたままでも…んっ…」


☆彡


 翠夢は、待っている瑠璃の口に、ずれないように慎重に、自分の口を当てた。そのまま、目を閉じた。

 これが、翠夢と瑠璃の初恋かつ、ファーストキスであった。


☆彡


 2人は、2秒後に唇を離した。

瑠璃は力が抜けてしまい、尻餅をつきかけた。翠夢に支えられ、何とか身体をぶつけずに済んだ。顔から火が出る…ということわざもあるが、耳まで赤くしており、話をしてもあまり反応は期待できない状態だった。


☆彡


 この後、2人は帰る予定であった。瑠璃はほぼ自分の世界に入っており、まともに反応できなくなっていた。翠夢は手を引っ張って帰りの電車に乗ることにした。手を繋ぐのだが、自然と恋人繋ぎとなっていた。 


☆彡


 駅に入ってからはさすがに手を繋ぐのは恥ずかしいと思われたのか、翠夢から手を離した。瑠璃がついてきていることを確認していたが、はたから見ると兄と妹にしか見えなかった。

 帰り道が変わる直前、瑠璃は翠夢の手を引っ張って人が居ないところに誘われた。

「こっちきて」

「……どうしたんだ」

 引っ張ってくること自体が、控えめな印象の瑠璃にしては珍しいことだった。翠夢自身も珍しいと思っていたが、何がやりたいかは大体想像がついていた。瑠璃も慣れていないせいか、声が裏返っている。

「んっ……キスして」

 珍しく自分から誘うことにした瑠璃。細い身体が震えているが、それでも何とか手を翠夢の後ろに回し、目を閉じている。そんな瑠璃の態度を見て翠夢も、瑠璃の後ろに手を回し、ハグをした。

「このままするぞ」

「あっ……んっ!」


☆彡

 

 抱擁から間髪入れなかった翠夢のキスに、瑠璃はびっくりしていた。それを感じたのか、翠夢は5秒後、唇を離した。

「急に無理にして、ごめん」

瑠璃は首を振って無理矢理を否定した。

「私が望んだことだから、謝らないで」

 この後、瑠璃からキスをした。眼鏡をかけた清楚な女の子からされることは、現実的にはもう考えられなかった。そんな翠夢にとって感情を動かされることだったか、ハグが激しくなっていた。晴れて恋人同士になったこともあり、2人でお互いのことを確認することに夢中になっていた。


☆彡


「夜も遅い。急いで帰ろう」

「……はい!」

 初デートを終えて2人は帰宅する。別れたくない、いろいろな感情が昂ぶりすぎてもう3回もしてしまった。そんな感情を持って。


☆彡


 その夜、翠夢は悪夢を見た。


★彡

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