甘くなかった
『ほうほう。全部、キューブ状になってるんですねーー。これは、使いやすいですね』
シェッフルの言葉に、俺はがっかりしていた。
想像したものが生み出されるなら、レトルトカレーが出来上がってくると勝手に思っていたからだ。
『浮かない顔をしていますけど、大丈夫ですか?』
「いや、大丈夫」
『それでは、調理をしましょう。えっとーー。お鍋は?』
「な、べ?あーー、そうだ、そうだ」
レトルトカレーを想像したせいで、皿にキューブ状の野菜と肉が盛られているだけだった。
ちなみに、カレールーは小麦粉とわけのわからないスパイスが並んでいる。
『お鍋を想像出来ますか?』
「大丈夫、出来るよ」
俺は、母が大事にしていた花柄の鍋を想像する。
『おお!助かります。じゃあ、後はやりましょう』
「いいのか?」
『ええ。あなたに任せるとどんな料理が出来上がるかわかりませんから。今回だけは、やりましょう』
「ありがとう、シェッフル」
俺は泣きながらシェッフルを見つめる。
『でも、こんな不思議な形の野菜があるんですねーー。お肉も四角い』
シェッフルは、具材を触りながら笑っている。
確かに、こんな機械で均等に切られたようなものはこの世界には存在しないだろう。
『明日からは、ご自身でやって下さいね。我々が手伝ってしまう事がバレてしまうと我々もあなたも抹消されかねませんから……』
「抹消……!!それは、お互いによくないよな」
『そうですね。我々は、あなたが想像したものを作るだけに作られています。それが、想像したものではないものを作ったとバレてしまいますと反乱とみなされてしまいますからね』
「反乱って……」
『暴走とみなされるんですよ。そしたら、我々は抹消されます』
俺の想像がよくないせいで、シェッフルが抹消されるのは申し訳ない。
「明日からは、ちゃんと想像して。俺が作るから……」
『よろしくお願いします』
シェッフルは、鍋に火をつけて具材を煮込み始める。
野菜は、小さくてすぐに煮込まれた。
そろそろホウが戻ってきそうだ。
シェッフルは、カレー粉を作って鍋に入れる。
カレーのいい匂いが部屋を包み込み始めた。
『それでは、完成しました。後は、出来ますか?』
「あぁーー。ありがとう」
『では、失礼します』
シェッフルが消えて、ホウがやってくる。
『いい匂いだねーー』
「カレーを作ってみたんだ」
『へぇーー。やっぱり、シェッフルはアーキーも使えるんだね』
「そ、そうだな。あっ、盛り付けるよ」
盛り付ける……?
どうやって、やるんだよ。
宅配されてきた商品は、いつもちゃんと入ってきてるし……。
母がいた頃も、カレーは器に盛られてやってきていたのだ。
ピー、ピー、ピー。
炊飯器の音が鳴る。
大丈夫!!
盛り付けられる。
俺は、しゃもじを持つ。
お、おりゃーー。
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