あのーー。

部屋に入るとキッチンに行く。


「さてと、シェッフルを使ってみるかな」


俺は、ソウヤ理事長が手紙で教えてくれたシェッフルの使い方を思い出しながら呼び出す。


まずは、作りたい物の使う道具を思い浮かべながらシェッフルを呼び出す。


俺は、ホウにピザを食べさせようと思っていた。


(ピザ……ピザ……)


ピザの道具を思い浮かべた俺は、「シェッフル」と叫んだ。


シェッフルは、見事現れた。


(よかったーー。やっぱり、スキルは関係ないんだなーー)


俺は、シェッフルが現れた事を喜んでいた。


『あのーー』


「あっ、はい」


『ピザを作りたいんですよね?』


「はい。そうです」


俺の言葉に、シェッフルはコンロの上まで歩いて行く。


『通常、ピザを作るとしますと……。オーブンや綿棒やまな板や包丁なども必要になってきます』


「はい」


『でーー。今まで、1000年以上シェフをやってますが。こちらで、どうやって作りますか?』


シェッフルは、困ったように眉を寄せながら検索機を見せる。


「これは、検索機ですけど……」


『いえ、検索機ではありません。ただの四角い物です』


ただの四角い物??


俺の頭の中を、はてなが支配していく。


『それと、これは何でしょうか?これで、何が出来ますか?』


そう言って、シェッフルが指差した物を見て、俺は理解した。


「あーー」


『どうされました?』


俺は、その場に崩れ落ちた。


『だ、大丈夫ですか?』


「だ、大丈夫。ちょっと待ってて」


そうシェッフルが見せた四角い物は、スマホだ!


で、これは何かと言って見せられたのは【ニコニコ出前】のマークの入ったバイクの模型だった。


そうだ。忘れていた……。


俺は、ずっと出前をとっていたのだ。


そして、俺は料理の作り方を知らない。


母が生きていた時は、母がしていた。


それを見る事もなかった。


幼少期の俺は、魚は切り身が泳いでいると思っていたし。カレーは、鍋を叩けば出来ると信じていた。


小学生になった俺は、炊飯器に何でもいれれば料理が出来ると勘違いしていた。それで、炊飯器を10回以上も壊した。


『あのーー。どうされますか?』


シェッフルが、俺を覗き込んでくる。


「え、えっとーー。どうしましょう?」


『おまかせとかにしますか?』


「あっ、えっ、そんなの出来るんですか?」


『はい。出来ますけど……。料理を作るのは、あなたになりますが大丈夫ですか?』


「えっ?」


『食材は、切らせていただきますよ!あなたがやるのは、あくまで炒めたり、煮たり、オーブンにいれたりですよ!出来ますでしょうか?』


シェッフルは、困った顔をしながら俺を見つめる。


出来るか出来ないで言われたら、出来ないだろう。


ただ、ホウの為にも美味しいものを食べさせてあげたい。


『それと、後片付けは手作業ですが……。大丈夫ですか?』


うるうるした目で、シェッフルは俺を見つめてくる。


「だ、だ、大丈夫です!!」


俺は、自信満々に言った。


『よかったです!では、やりましょうか!今回は、人数を増やしますねーー』


シェッフルは、小さな手を叩いた。

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