マトメーの練習

ミズーは、俺をチラリと見てから、また検索機で検索していた。


「そうですか!その手がありましたか」


そう言って、落ちてますって態度を見せている俺に検索機の画面を見せてくる。


【スキル汚部屋のものは、別スキルを習得するのは不可能。

(スキルマトメーのlevel1を持っているものを除く)】


「うん?どういうこと?」


俺は、項垂れた体を起こしてミズーを見つめる。


「要するに、汚部屋スキルのみしかない場合は、別スキルは習得する事が出来ないわけです」


「それは、わかってる」


「ただし、スキルマトメーのlevel1をすでに習得しているものは別スキルも習得出来るって事です。つまり、こういう事です」


そう言うとミズーは、別のポケットからノートを取り出してきた。


【スキル 汚部屋】

別のスキル習得不可


【スキル 汚部屋】

【スキル マトメー】

別のスキル習得可


ミズーは、それを書いて俺に見せた。


「ミズー、俺は上のやつだから駄目じゃん」


ミズーは、その言葉に首を左右に振った。


「出来ます。何ヵ月かかってもいいから、マトメーを覚えるんです。アーキー」


「いやいや、これは生まれつき持ってるやつだろ?俺は、持ってないから……」


ミズーは、俺の両肩に手を置いてこう言った。


「君が生まれたのは、昨日です」


はあ?


37歳のおっさんを掴まえて言う台詞か……。


「だから、アーキーはマトメーを習得するんです。部屋で、練習もかかさずにやって下さい。わかりましたか?」


「えっ、あっ、えっ」


「国の命運がかかってるんですよ!」


急に国とか出されたら、正直重いわ


「アーキーの気持ちはどうでもいいです」


ミズーが、心を読めるのを忘れていた。


「わかった、わかった」


もういいや!向こうに帰れない身としては、どうとでもなればいいや!


俺は、投げやりな気持ちで引き受ける事にした。


「そう言っていただけて、嬉しい。ありがとう」


そう言って、ミズーは喜んでいる。


「どういたしまして」


「じゃあ、さっそく寮の部屋に戻って、マトメーの練習をして下さい」


「はい、わかりました」


「そっちじゃないです。あっちです」


「あーー、そうでした。はい、さよなら」


真っ白過ぎてわからないんだよ。


俺は、何とか必死で部屋に帰ってきた。


途中、女子の部屋を五回ぐらい開けて殺されそうになったけど……。


とりあえず、まだホウが戻ってきてないのを確認した。


「じゃあ、やりますか!」


さっき、授業で教えてもらったイメージを頭に流す。


出来るぞ!


出来る、気がするぞ!



「マトメー」


俺は、デカイ声で叫んだ。


ザッ……


ザザッ…………


ザザザザッ………………


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