永遠の命を手に入れた

@morukaaa37

第1話




 これまで多くの本を読んできた。


 少なくとも人並み以上には読んできた自信がある。友達も人並み以上に少ないのがその証拠だ。


 その中には、人の生にスポットを当てた小説が少なからずあった。


 それらのほとんどは、平凡な人生から一転病気により残り儚い余命を告げられた少女。過酷な時代に生き戦いの中死ぬ恐怖に怯える少年。晩年を過ぎベットの上、自由に生きれず死を待つだけの老人。と言ったとても平凡な幸せを送ることは出来ない主人公たちの物語だった。


 彼らは等しく命の有限さに嘆き悲しみ怒り諦める。だが、物語が進むにつれ、多くの人との出会い別れ逆境を越えるたび、彼らは死への恐れより生へのありがたみを感じ始める。今生きて世界に触れ、家族友人恋人と出会えた奇跡を噛み締めるのだ。


 オレはついさっき読み終わった小説のページを閉じる。


 ラストのページには、10年しか生きられないと告げられた青年が、恋人の腕の中で安らかに眠っていく様子が綴られていた。少ない人生の中でも自分はとても幸せだったと彼は言う。


 果たして自分だったらどうだろうか。


 ベットの上で目を閉じて想像する。暗闇の中、何も見えない何も聞こえない何も感じない。家族友人どころか自分すら存在しない世界。


 「………うん、やっぱり死にたくねぇ!」


 オレはベットから跳ね起き、机の上に置いていた広告を手に取る。仕事終わり、それは当たり前のようにポストに入っていた。


 てことで、オレは不老不死キャンペーンに応募する。

 

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