第44話
アイリスのお腹が大きくなるにつれてそれぞれの城は着実に子供の受け入れ態勢を整えていたが、中々揃わない人材がいた。
今日も王城からその問題についての知らせが届いて溜息が漏れる。
「また乳母候補に断られたのか……」
そう、我が子の乳母である。
着実に融和が進んでいるとは言え、人間と魔族の間の子どもの世話という未知の仕事を受け入れる人材がなかなか見つからないのだ。
乳母なしで育てるという選択肢もなくは無いが、アイリスは王国の王女や魔王妃としての仕事もあるから乳母なしではなかなか大変だろう。
私も魔王としての仕事を抱えてるから子どもの面倒を充分に見られる自信は無い。
「なあ、乳母兼任してくれないか?」
後ろに立っていた補佐官にそう聞いてみるが「今の仕事を気に入ってますので」とバッサリ断られた。
「魔王領から乳母を派遣すればいいのでは?」
「将来的には王国を統治する側になることを考えると極力人間を乳母としたいんだがな、それに魔族と人間では肉体的な強度が違うから手加減間違えて死なせたとか起こりかねんぞ」
「手加減に関しては淫魔族なら問題ないかと」
「どうしても見つからなかったら魔王領から乳母を派遣するしかないな、念の為乳母候補だけ探しといてくれ」
「魔王ノアの仰せのままに」
補佐官に話を丸投げすると執務室を出ていく。
まだやっておかなければならない事はいくらでもあるが、疲れたので楽しいことを考えることにした。
具体的に言うと我が子の名前を考える作業である。
子供の性別は生まれるまで不明だから、男の子だった場合と女の子だった場合を決めなければならない。
候補となる名前とアイリスの姓を組み合わせ(私は元々孤児だから姓がない)て字面や音の響きを確認し、あれやこれやと書いては消し書いては消しを繰り返す。
そうして書き損じを積み重ねること10枚。
「よし、決定!」
男女ともに2つまで候補を絞り込んだので、あとは子供の顔を見てアイリスと話し合って決めよう。
その旨を報告するため私は指輪の通信魔法を立ち上げるとアイリスの元へと繋げていく。
『元気にしてた?』
「アイリスこそ調子はどう?」
『順調にやってるわよ、早ければ来月辺りには生まれてきそうって言われたわ』
「もうすぐだね。あと、名前の候補なんだけどいくつか考えてみたんだけど聞いてくれる?」
『確定ではないのね』
「子供の性別もわかんないし、ちゃんと顔を見て決めてあげたいから」
『それもそうよね。で、候補は?』
「男の子ならオリバーがリュカ、女の子ならエマかクロエがいいと思うんだけど」
『あ、エマのところでお腹蹴ったからこの子きっとエマって名前なんだわ』
「って事は女の子?」
『そうかも』
楽しみだねと笑い合いながらもうすぐ生まれてる子供を待ち侘びているのだった。
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