第42話
アイリスの妊娠が発覚してほどなく、アイリスは眠りつわりと呼ばれる症状で良く寝るようになった。
仕事中は眠気覚ましのハーブティーを飲みながらどうにかこなしているらしいが、それ以外はずっと寝ているという状態だという。
仕事の手が空いた隙を見てアイリスの様子を見に行きたい気持ちはあれど、とにかく仕事が減らない。
「……なんでこう次から次へと仕事が舞い込むんだろうな?」
「それが魔王の宿命というものです」
魔王領は基本的に地域領主の権力が強く、魔王はしょせんそのとりまとめ役に過ぎない。
しかし血の気が強くちょっとしたことですぐ喧嘩になり油断すると即戦争状態になるので、領主同士のトラブルが起きると魔王が仲介に立たないといけなくなるため仕事が減らないのだ。
「アイリスに会いたい」
「この仕事も魔王妃殿下のためですよ、これなんか人間と魔族の融和政策の内容ですし」
「分かってる。反魔王勢力もぼちぼち落ち着いてほしいんだけどなあ」
手元にあるのは一枚の嘆願書だ。
この半年ほどで魔王に従う事でのメリットを見せることで従ってやってもいいかな~程度まで大人しくさせることに成功した。
ただ血が騒いで仕方ないので力を振るわせろという嘆願書をよこしてきたのだ。
「王国内の魔物狩りに行かせるか?魔物肉は腹の子どもにもいいと聞くしな」
「魔物狩りだけでは退屈でしょうからダンジョンの探索許可も取った方が良いかもしれませんね」
ダンジョンというのは魔力の滞留する特殊な場所で魔物が大量発生する危険地帯だ。
魔族にとっては思う存分力を振るえる修業の場であり遊園地でもあるので、王国内のダンジョンの探索許可が取れればそれなりに大人しくなるだろう。
ただ人間にとってはダンジョンと言えば恐怖の象徴で、自分を鍛えたい騎士や一部の奇人変人以外は近寄らないからむしろ魔族によるダンジョン探索は都合がいいかもしれない。
「王国にダンジョン探索許可を取ってみるか」
****
王国からのダンジョン探索許可はすぐ下りた。
ただ王国では魔物肉や素材は縁起が悪いという考えが強くてアイリスに食べさせるのは無理だった。
「でも魔族は結構積極的に魔物肉を妊婦に食わせるよな」
「妊婦が魔物肉を食べると魔法の上手な子に育つと言われていますからね」
「根拠があれば私の獲った魔物を食わせられるんだけどなあ、まあしょうがないか」
アイリスの眠りつわりが落ち着いたら相談してみようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます