第40話

アイリスの妊娠が分かったのは私たちの結婚一周年記念日を一緒に過ごした直後であった。

王国の医者が妊娠を確認したことを王城に派遣したリリイから聞いた私は仕事もほっぽり出して王城に飛び立った。

「アイリス!妊娠したって本当?!」

「間違いないそうよ!」

その話を聞くとすぐさまアイリスを抱きしめ、それから軽く口づけをした。

「夢みたいだわ」

「それはこっちのセリフだけど?!」

「子供を産むのに必要なものは魔王城でも用意させるけど、なにかある?」

「今はまだ大丈夫。ただ、定期的にこの子に声をかけて欲しいぐらい」

「……もちろん!」

再びぎゅっとアイリスを抱きしめるとそのぬくもりがじんわりと心地よかった。


****


アイリスとの面会を終えると、補佐官がふいに「アンヘル皇子はどうなさるんですか?」と聞いてきた。

「魔王城で養育を続ける。魔族にすっかり馴染んでいるしな」

「いえ、そういう意味ではなくお二人の妊娠の事伝えたら小躍りして喜ばれるのでは?」

「アンヘルは喜ぶだろうが……同時に奇行に走りそうでな……」

「奇行?」

「アイリスとの間に子どもを作る計画がある話をした時、アンヘルが『とりあえずその時のために葉っぱ隊の練習しますね!』って言って肌色の下着に葉っぱ型の飾りをつけたものを着て踊る練習しててな……」

YATTA!YATTA!と歌いながら葉っぱ一枚で踊り狂うアンヘルと彼の仲間たち(騎士・執事はもちろん魔族の付き人や貴族青年も含む)を目撃しているので、微妙に報告しづらい。

「しかも最近城下の庶民にも流行ってるらしくて妊娠の話報告したら魔王城周辺がパンイチダンス集団に囲まれかねん……アンヘルは妙なカリスマ性があるからな……」

そう告げると残念なものを見る目でこちらを見る。

残念なのは私じゃなくてアンヘルのほうなのでそんな目で見ないで欲しい。

「私は夜までこっちにいるから補佐官は先帰ってアンヘルに報告しといてくれ、代わりにパンイチダンスしそうになったら殴ってでも止めてくれ。私の城下で裸踊りブームは嫌すぎるしな」

「ノア魔王殿下はどうなさるのですか」

「報告しておきたい人がいるんだ」

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