第21話

王城での結婚式が終わると、その後は政務に忙殺されて気づけば1ヶ月。

通信魔法でお互いの声を聞くことを心の支えとしながらアホみたいに積み上がった政務を延々と片付けていたある日。

「魔王妃殿下が飛行魔法で御来城です!」

「アイリスが?!先触れなしで?!いや別にいいんだけど!」

この1ヶ月必死に仕事を片付けていたおかげで緊急性の低い書類しかないを幸いに、執務室をからアイリスがいるという魔王城の入り口へと飛び出していく。

「アイリス!」

「ノアー!!!!!」

文字通り飛んできた私をよろけつつも全身で受け止めたアイリスは「ひさしぶりね!」と笑顔を爆発させてきた。太陽よりも眩しいその笑顔は今の私によく効く。

「今日はどうしたの?」

「新婚旅行の準備が出来たわ、来月の頭から1週間よ!」

新婚旅行というワードに思わず私が固まる。

前に聞いた話だと新婚旅行とは貴族王族の風習で、日常から離れて子作りに集中するための期間だと聞いている。

詳細を聞くためとりあえずアイリスを客間に連れて行き冷たいお茶で一服する。

もう夏も初めで最近は暑くなり始めてきたから氷魔法で冷やしたお茶が美味しい。

「新婚旅行の話だけど、まだ子作りのための魔法が見つかってないのに?」

「違うわよ、イチャイチャするために新婚旅行に行くの!」

「それもそっか、場所とか行き方は決めてあるの?」

「場所はもう決まってるわよ。

王国南部にある王家所有の離島よ、王城から経由地の港までで少し時間がかかるけどね」

地図を開いて場所を教えてくれる。

王城から港までが馬車で3日、港からは帆船で2時間ほどという場所にある離島だそうだ。

「王国の海かあ、行ったことないな」

「ノアは王都から外に出たことないものね」

アイリスはその立場から両親と一緒に王国各地を慰問することがあったけれど、私は魔王の紋章が出るまでは王都から外に出たことがない。

魔王になってから魔王領を回ったりはしたが大体襲撃されてたのでいい思い出がない。

「ここなら魔王城からもあまり苦労せず行けそうですね」

「確かに。私は飛行魔法で行くからアイリスと島で落ち合う?」

「せっかくだし港で合流して一緒に行きましょう?半日でいいから港町も案内してあげたいの」

「じゃあ港町で落ち合おうか」



そんなわけで私たちの新婚旅行はあっさり決まったのであった。

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