第18話
と言う訳で、結婚式当日。
私たちは王国の挙式で伝統的に使われる白い燕尾服とウエディングドレスに身を纏い、王国の伝統にのっとった挙式を粛々と執り行うことにした。
王国の伝統的な挙式スタイルは神の代理人たる教皇(これは王家の人間の場合であって庶民は神父とかシスターがやる)が司会進行を務め、自らの貞節や永遠の愛を証明する宣言を証人となる客人の前でを述べた後、純潔を愛する人に捧げる姿をみんなの目前で見せつけー大昔は寝所に行くのを見守ってたらしいが今はキスで代替されてる―て終了となる。
今回はその司会進行をアイリスの執事・トマスに押し付け、もとい一任して行うことにした。
そうして永遠の愛の宣言をしようとしたその時だった。
「ちょーっと待ったー!!!!!」
王城の中庭に野太い大声が響く。
額に勇者の紋章を宿した筋骨隆々の逞しい少年を筆頭とした5人組を見たとたんに、来たなと分かった。
「勇者オーウェン、魔王に攫われし王国の王女を助けに参りました!」
その瞬間に場が沸騰したような大騒ぎになる。
やっぱり自国の王女には魔王より勇者と結婚して欲しいのだろうなあ、と察して苦々しい気持ちが沸き上がる。
「別に攫われてないのだけどね」
アイリスが冷静にそう突っ込んだが誰も聞いてない。
場が沸き上がりすぎて誰も聞こえてないのである。
「魔王ノア、今ここで王女を離せばお前を傷つけはしない!」
「……勇者オーウェン。冷静に考えろ、そもそも私が彼女を攫ってきたのならここで挙式せず閉じ込めたほうが早いと思わないのか?」
「魔王の言うことになど耳を貸すものか!」
おい人の話聞けよ。
そう突っ込む間もなく聖剣を持って仲間たちと突っ込んできたので、結界と攻撃反射を発動させる。
しかし仲間のひとりが腕のいい魔法使いのようで攻撃反射を打ち消し、勇者が結界を力技で叩き割ってくる。
(さすがにその辺は勇者だな!)
私もアイリスを奪われまいと右腕にかき寄せ、亜空間に仕舞ってあった魔槍を引っ張り出して聖剣の攻撃を抑え込む。
魔王の紋章を持つものだけが使える魔槍は大きさ自由自在で魔法との相性が良く武器として優秀だが、うっかりすると王城を吹き飛ばしそうなので本気で振るえないのが困る。
しかもその隙間に弓兵が弓を射てくるのでこちらは結界を張りなおす。
魔槍で思い切り勇者を振り飛ばすと三重に結界を張りなおす。
「アイリス、どうしようか」
「たぶん何言っても聞かないからボコボコにしてもいいと思うわよ」
「それ帝国と敵対することにならない?」
アイリスが思いのほかアグレッシブな答えを示してきた。
結界のお陰で勇者パーティーの攻撃は防げているので話す余裕が出来たが、弓兵が王国の宰相の私兵であることや数人の冒険者が勇者の後衛に動いてるのも気付く。
結界の最後の一枚にひびが入ってきて、勇者の手がアイリスに伸びてきた。
「アイリス王女!」
そうして手が伸びた瞬間、アイリスの結婚指輪に入れてあった結界魔法が発動して勇者の手をブロックした。
「私は誰に何と言われてもノアの妻で、ノアは私の妻よ」
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