第5話
一週間後に迎えに行く、と宣言したあと城に帰ると上位魔族たちが城に押し寄せていた。
「人間を妻にするなどどういうことですかな?」
帰ってきてすぐにそう問いただしてきたのは吸血鬼の中で最も権勢を誇るノスフェラトゥス侯爵家当主ブラム・ノスフェラトゥスであった。
目つきはきついが慇懃無礼なこの老紳士は反魔王派の中では比較的穏やかなほうではある。
しかし以前からノスフェラトゥス侯爵家からの婿取りを執拗に勧めてきており何度か一族のものを夜這いさせてきたことがあって苦手だった。
「私が決めたことに文句が?」
「魔王ノアの血を残さないというのは魔族にとって損失です、お考え直しを」
「ノスフェラトゥス侯爵。女王アイリスを妻に迎え入れることで人間の住む土地が魔族の支配下に入ったことが吸血鬼にどのような影響を及ぼすか、わかるか?」
「……人間の血を入手しやすく出来る、ということですか」
あらゆる動物の血を飲む吸血鬼であるが、彼らにとって最上の食料は若い人間の女性の血液である。
それを得るために誘惑や催眠の技術を得た種族である彼らにとって人間の土地が魔王の領地ともなれば人間に催眠をかけて自分専属にすることが容易になる……まあその前に血液の買取サービスでも作らせて催眠や暴力を使わず人間の血を得られる供給システムを作ったほうがいいだろう。
「そうだ。人間の血液の安定供給は吸血鬼の悲願だろう?」
ノスフェラトゥス侯爵が苦い顔をした。
「私が子供を諦めただけで吸血鬼の悲願が叶ったんだ、いいじゃないか」
私がそう言い放つと後ろから奇襲がかかり、二人分の結界を張る。
襲い掛かってきたオークに「失礼じゃないか」とノスフェラトゥス侯爵が怒鳴りつける。
ゴブリンの長であるグィリー・レオナルド伯爵は「うるせえ」と切り捨てた。
「人間を俺たちの土地に踏み入れさせるたぁどういう神経してんだ!」
ゴブリンは国内各地に集落がありそのすべての集落をとりまとめるのがこのグィリー・レオナルド伯爵であるが、彼の領地はアイリスのいる王城と魔王城を結ぶ直線状にある。
「そもそもグィリー伯爵領を通るかどうかも決めてないんだが?」
「俺たちのところを通るとかじゃねえ、魔王城に人間ごときを迎え入れるなって話だ!」
「ああ、そういう話か……」
グィリー伯爵は反魔王派のうち結構暴力的なタイプになる。
どうやら魔族の血が薄く人間として育った私が魔族を取りまとめるのが気に食わないという態度を隠さす、たびたび私にこうして襲い掛かってきた。
「じゃあ女王アイリスは魔族の私と結婚したから魔族だ、魔神クラウデry「ふざけんな!」
そういって再び襲ってきたので結界を張りなおすと同時に攻撃増幅反射魔法を発動させる。
すると結界にぶつかった衝撃と増幅された攻撃反射により彼の小さな体が吹き飛んだので水魔法でけがをしないように守ってやる。
「もう一度言うぞ。女王アイリスは魔族の私と結婚したから魔族だ、魔神クラウディアの名のもとに宣言する……ノスフェラトゥス侯爵、いいな?」
念押しすると彼は興奮したように顔を赤らめていた。
「……魔王殿下は3重詠唱が出来るのですね」
そういえば普通は魔法を同時に複数発動させるには二重詠唱が必要なんだった。先代魔王ですらなかなか習得できなかったというから本当はめちゃくちゃ難易度が高いのだ。
「5重まで出来るぞ」
そう告げるとノスフェラトゥス侯爵は感激したように打ち震える。
「わがノスフェラトゥス侯爵家は誠心誠意、魔王ノアにお仕えいたします」
あっ、仲間になってくれた。転換が早すぎる。
「魔王様の強さに心揺さぶられたのでしょうね」
「補佐官お前いつ戻ってきたの?」
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