アスカとツバサ

@burger-2

ティーバッグと魂

タンブラーに入った紅茶から湯気が出てる

それは何処かに昇っていくように見えて、消えていった

入れっぱなしのティーバッグからじんわりと何かが滲み出ていき、水面へ溶け込んでいく

それはティーバッグの魂だよとツバサが言う

魂?そんなものがティーバッグにあるの?とアスカが訊く


そもそも魂とはなんだろうか、生き物にあるものだろうか

脳みそを射抜かれたシカが倒れたら、そこにはもう魂はないのだろうか

ではシカに新しい脳みそを与えたら、そこには魂はあるのだろうか

虫にも魂はあるのだろうか

人間よりも遥かに小さい彼らには小さな魂があるのだろうか

魂とはニューロンなのだろうか、シナプスなのだろうか、電気信号なのだろうか

死んだら魂はどこに行くのだろうか

天国、地獄、極楽、輪廻転生で違う生き物へ移るのだろうか

どれにしても大きな場所じゃないと溢れかえってしまいそう

少なくとも地球より大きくないと、狭くてぎゅうぎゅう詰めになってしまう

もしそんな場所がないのなら、なら魂は何処へ

もしかしたらそこら辺を彷徨っているのでは

死んだらそこからウロウロと

生者には見えない魂の行進が行われているのかも


いや、もしかしたら魂は湯気なのかもしれない

フッと昇りつめ、空気のどこかへ消えていく

いたのか、あったのか、そんなのがわからないぐらい綺麗に自然に空気へ溶け込んでいく

もっともっと、もしかしたら、魂はティーバッグからお湯へと溶け込む紅茶の成分かもしれない

いつの間にか一体となって、お湯は紅茶へとなる

お湯はいなくなり熱い紅茶が残る

ティーバッグは人間かもしれない

だからティーバッグには魂がある


ツバサは紅茶を飲んだ

なんてね、と言って舌をわざとらしく出す

真っ赤な舌を見て、まだ冷めてなかったんだと思った

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